わたなべ整形外科関連

2012年07月22日

クラブハウス DaVA

わたなべ整形外科にはスタッフ専用の保養施設があります。

3年前の10月に完成したもので、足利で唯一のスカッシュコート、フリークライミングウォール、ビリヤード、ダーツ、フーズボール、内外2か所のホームシアター、バーカウンター、ラナイには常設のバーベキューグリル、暖炉を装備し、これまで様々な当院イベントに利用されております。 

DaVAとは、サンスクリット語で水を意味しており、バリ島のアヤナホテル(旧リッツ・カールトン)のレストランの名前から拝借しました。

この施設の建設に当たっては、賛否両論ありました。日本全体の景気が冷え込む中、何を考えているんだ?などと言う厳しい意見もありましたが、私の基本的な考え方は、「バリバリ働いて、みんなでしっかり楽しむ!」であり、他人に迷惑をかけず、福利厚生施設としてスタッフみんなが喜んで利用してくれるのであれば、これは実行すべきであると考えました。またこの施設を建設することで地方都市の景気回復に多少でも貢献できたのではと、ちょっぴり自負しております。

DaVAが完成してからは、スタッフを対象としたイベントやパーティーが一気に増え、また従来からあったイベントも、その内容がかなりレベルアップしたような気がします。 

私が「I am Happy !」と感じる瞬間は多々ありますが、イベントやパーティーを主催し、参加した人たちが心から楽しんでいる様子を拝見した時などは自分自身とってもハッピーな瞬間です。また医師という職業をたまたま選んだおかげで毎日たくさんの患者さんから心のこもった感謝の言葉や、オーバーワーク気味の私の体を気遣う優しい言葉を頂きますが、これまた心温まる瞬間です。私は何かさりげない親切をしてあげて、お礼を言われた時、英語人に対しては、「It’s my pleasure !」と即答することにしていますが、日本語にはなかなかこういう状況にピッタリくる言葉が見つからなくて困ります。

さて7月19日(木)午後、恒例となった真夏の大掃除、それに続くDaVAでのバーベキューパーティーがありました。今回は私の独断と偏見でパーティー参加者のドレスコードを、女性は浴衣、男性は甚平と決めてみました。結果、パーティーはいつも以上に盛り上がり、とてもいい企画だったと自画自賛しております。
   

私は大学入学以来、ラルフローレンの白の定番ポロシャツを 今でも襟を立てて、洗いざらしで、もちろん素肌に着ています。(最近素材が劣化し困っていますが、他にこれといったブランドが見つかりません(´・ω・`))

このポロシャツはショートカットのヘアスタイル、適度の日焼け、そして厚く強靭な胸板という条件が揃わないとあまり似合わないと、私は勝手に思っています。そうは言っても今の私はアイスホッケーをやっていた学生時代、「肉団子人間」とか「金太郎」などと呼ばれ、胸囲120cm超を誇っていた頃と比べると、かなり見劣りするのは否めません。

中学、高校とハンドボール部に所属し、足利市立第3中学校時代は練習試合も含めて、3年間一度も負けた記憶がなく、3年生の時は栃木県大会で9年連続優勝(一応レギュラーメンバーでした)。足利高校時代も3年生の時、部員8名ながら県大会で優勝しています。試験期間と正月の3日間以外毎日練習という、普通科で全員進学という高校ではちょっと考えられないような超体育会系の生活が報われた瞬間でした。
 
以前ブログでも書きましたが、「TAKE IVY」との出会い以来、私の服装はトラッドが基本です。このファッションは流行を追う必要がなく、価格も手頃で、貧乏学生だった頃の自分にはとても合っていました。還暦を過ぎた今、雑誌LEONの提案するライフスタイルにも魅力を感じますが、やはりボタンダウンのシャツを着ると落ち着くし、これからもブランドや価格に惑わされず、自分で納得のいくものを身に着けて行こうと考えています。

しかし一番の基本は何といってもその中身だと思います。筋肉が委縮し垂れてしまった大胸筋や大臀筋、そしてしっかりと飛び出したお腹の脂は、和服を着れば誤魔化せますが、お風呂に入るとすぐにばれます。かつてソニーの盛田昭夫氏がゴルフを終えてラウンド仲間と風呂に入った時、仲間の尻の肉(大臀筋)が醜く垂れ下がっているのを見て、自分はこんな醜い姿にはなりたくないと、60歳から硬式テニスを始め、65歳からスキーを始めたという話が有名ですが、さすが盛田さん、という気がします。

私も7年前に、20歳から始めたゴルフを卒業し、最近はもっぱら硬式テニスとsquash,ジムのマシンでいい汗かいてますが、汗をかいた後のビールの味は、また格別です。

わたなべ整形外科の2階では美容皮膚科Bonheurを運営し、来院される方に「光老化皮膚」として、紫外線による皮膚への障害を説明している立場上、あまり大きな声では言えませんが、これからも上品に日焼けし、いつまでも白の半袖ポロシャツが似合う状態をキープしたいと思います。                                                                  2012.7.3 (2021.8.26改訂)

2012年06月27日

クスリのリスク

先日、新聞の論説記事の中に「クスリとは、逆さに読めばリスクである。 」というフレーズがありました。

これを読んだクスリ嫌いの患者さんは、我が意を得たり、とばかりに拍手喝采かと思います。

確かにクスリに副作用は付き物です。たとえば高血圧などの場合、日常生活の指導だけではどうしてもコントロールできない方にクスリを処方しようとする時、「このクスリは一度飲み始めると、ずっと飲まなくちゃあいけないんでしょう?クスリの副作用も怖いし飲みたくありません。」という方が多くいらっしゃいます。

しかしよく考えてみると、クスリを飲んで長生きするか、飲まずに早死にするか、どちらがいいですか?ということが問われているのであって、ここは冷静に服用することを選択すべきかと思います。最近の医学の進歩は目覚ましく,副作用の発現を最小限に抑え込んだ、有効で安全な薬剤が次々に開発されています。

さて、私が日常診療で患者さんの治療をする際いつも心掛けていることは、患者さんを自分の最愛の肉親や友人に置き変えてみるという事です。これは治療全般を通じて行っていることですが、痛みを伴う治療や、副作用の出る危険性のあるクスリを処方する場合などは特に慎重に、例えばこの治療、このクスリを自分の親に勧めるだろうかなどと考え、治療を行う上での自分なりの判断基準にしています。

クスリを処方する際もう一つ重要な事は、そのクスリを処方した場合の、患者さんの受けるメリット(クスリの効果)とデメリット(クスリの副作用)を天秤にかけ、そのメリットがデメリットを上回った時だけクスリを処方するという大原則です。

さらにもう一つ悩ましいのは、情報提供の問題です。どんなクスリにも多少の副作用はあります。製薬メーカーから提供される能書といわれる、クスリについての詳細な説明書(添付文書)の中には、ありとあらゆる副作用が列挙されています。これを患者さんが見たら、多分ほとんどの人がクスリを飲むのを躊躇すると思います。しかし何十万人に一人という極めて稀に起こるかもしれぬ副作用を恐れるあまり、有効な治療薬の服用を拒否して病状が悪化したとしたら、それはナンセンスと言われても仕方ありません。

ここはやはり医師が、責任を持ってクスリに関する詳細な情報を収集し、その病気の治療に最適なクスリを選択し、患者さんに誠意をもって説明し、注意深く使用する義務があると思います。

この際、主治医はその患者さんから全幅の信頼を寄せられている事が大前提ですが。 

2012年06月10日

医療費抑制策の愚

増え続ける医療費を何とか抑制しようと、厚生労働省は 2年毎に様々なルール変更を行なっています。

しかし現在の日本の年齢構成の変化や医学の進歩を考えれば、多少の医療費の増加は国民の健康維持のために必要なものであり、医療という業態の持つ関連組織の裾野の広さ、それに伴う雇用の創出などを考慮すれば、厚労省のなりふり構わぬ医療費抑制策には強い違和感を感じています。

世界の先進国の中で、日本の一人当たり医療費は対GDP比換算すると、ほぼ最下位という事実は、最近徐々に一部の国民の知るところとなりつつありますが、まだまだ日本の医療費は高いと誤解している人が大半かなと感じています。

これは勉強不足で怠慢なマスコミが、厚労省の流す偏った情報に対して何の検証も加えず報道し続ける為に起こる、壮大なる情報操作であると感じています。

こんな中、最近の風潮としてどうしても許し難いのは、高齢者に対する配慮に欠けた報道の仕方です。日本が太平洋戦争後の壊滅的な状況から奇跡の復興を成し遂げる為、極度の耐乏生活に耐え、大車輪の活躍をしてくれた恩人たちに対して、医療・年金その他さまざまな場面で 厄介者扱いするような世論形成は決して容認できるものではありません。

高齢者が尊厳を保ちながら、人生の後半をエンジョイし、自分達が長生きすることで若い人達に迷惑をかけて申し訳ないなどと、肩身の狭い思いをさせないような環境整備をする事は、現役世代に課せられた大切な使命であると感じています。

さて話を元に戻しますが、様々な医療費抑制策の中に医薬分業というのがあります。

これは美辞麗句で飾り立て、厚労省が強引な利益誘導の末、成立させた制度ですが 、その思惑は完全に外れ、全国で約7割程度普及した現在、医療費抑制どころか医療費高騰の大きな原因となっています。(役人たちはこの事実を決して認めませんが

詳細は当院ホームページに掲載してありますが、簡単に言うと多くの医療機関が院外処方を採用することにより、門前薬局での支払いが増え、医療費全体が高騰してしまったという事です。

受診する患者さんサイドから見ると、全く同じ治療を受け、全く同じ薬を処方されても、自分のお財布から出て行く負担は、院内処方を採用している医療機関を受診した場合よりも平均で約3割高くなります。医療機関は医薬分業を採用した方が儲かる仕組みになっていますので、最近の新規開業のドクターは、ほぼ100%院外処方となっています。

何だか院外処方の方が、時代にマッチした新しいスタイルで、院内処方は古臭いやり方のように誤解している人が多いようですが、(移動が大変な方が多い)整形外科に通院する患者さんの事を考えれば、3割安い窓口負担で治療が受けられ、天気の悪い日でも院内でお薬がもらえるという院内処方のメリットは計り知れないものがあると思います。

当院では院外処方採用の誘惑を封印し、これからもやせ我慢して、来院する患者さんの為に院内処方を続けて行きたいと考えています。    

平成10年1月、患者さん用の無料送迎サービスを始めた際、喜んでいただけると思っていた私の予想に反して、患者さんや医師会関係者から様々な苦言を頂戴しました。

「こんなに外来が繁盛しているのに、送迎バスを運行して、もっと儲けたいのか?」
「それでなくても診察の待ち時間が長いのに、こんなサービスを始められたら、待ち時間がさらに 増えてしまうんじゃないのか?」
「バスで来た患者さんだけ特別扱いしてるんじゃないのか?」

などなど、いろいろ叩かれましたが、患者さん用の無料送迎バスサービスは当院を開院する前からの私の悲願であり、批判される方達には一人一人誠意をもって説明し、現在もなんとかバスの送迎サービスは継続しております。

一人暮らしのお年寄りや車の運転ができない方、家族のサポートが期待できない方、タクシーで通院するのは経済的に厳しい方など、さまざまな社会的背景を抱え、痛くて辛くて通院したいけれど通院できない患者さんが現実に存在します。

現在わたなべ整形外科に通院されていらっしゃる患者さんの内、大体毎日の外来総数の5%前後の方が当院の送迎バスサービスを利用されておられます。今後利用者が減少したとしても、送迎を希望される患者さんがたった一人でもいる限り、このサービスは経営的には全くの不採算部門ですが、これからも断固続けようと私は考えており、利用されている患者さんから、心のこもった感謝のお言葉を頂くたびに、決意を新たにしております。

そもそも医療というのは基本的に人助け、困っている人を助け、その心の支えとなって希望を与え続けることを使命とするものであり、「奉仕の精神」がすべての医療活動のベースに流れているべきであると考えております。この強い信念さえぶれなければ、さまざまな心無い批判にも耐えられるし、胸を張って活動できるのではないかと考えております。 

さて当院では、祝祭日の午前中の診察や昼休みなしで利用可能なリハビリなど、バスの運行以外にも様々なサービスを実行していますが、これらはいずれも当院スタッフの協力なしにできるものではありません。スタッフ一人一人が「奉仕の精神」の意味を正しく理解し、医療機関で働くことに何らかのやりがいを見出してこそ実現できる事と思います。

また患者さんの描く理想の医療機関スタッフ像とは何か?

いつも優しく親切で、こぼれる自然な笑顔、清潔感あふれる身だしなみ、明るく爽やかに、そして病気に関する様々な相談に対し、親身になって専門的なアドバイスをしてくれる、などなど。

これら、医療機関スタッフに期待するものを我々がサラリと実行してはじめて、患者さんから感謝の言葉や、時には稀に、リスペクトの感情などが自然に生まれてくるものであり、我々は常にこの辺をわきまえた行動をとらねばと考えております。

外来で患者さんの診察をしていて痛感するのは、 様々な迷信や昔からの言い伝え、誰か医師以外の、物知り顔の人の断定的な情報などに惑わされている方がとても多いという事です。

また、新聞、雑誌、テレビなどで得た情報を鵜呑みにして、頭でっかちになって来院される方もいらっしゃいます。「昔からの言い伝え」には時々、真理をえぐった鋭いものもありますが、そもそも日本のメディアの伝える情報なんて、偏った一方的な情報ばかりで、話半分くらいに聞いて置かないと、ただただ振り回されるだけだと思います。

「タブーの正体!」川端幹人著 (ちくま新書)
を読むと、この辺の事情がよく分かります。

さて、はじめて来院される方の診察は、まずこの辺の誤解、思い込みを解きほどく作業から始まります。とは言え何回か来院し、お互いの信頼関係が築かれてからはサクサクと進むことになりますが、初対面から私のことを心から信用してくれる人などいませんから、この作業は結構苦労することがあります。

また最近の新たな動きとしては、あらかじめ当院のホームページにアクセスし、中には「院長ブログ」まで読まれてから来院するという方が増えて来たという事です。このような患者さんは、私の事をある程度下調べした上での来院ですので、初対面から話がとてもスムーズに進むことがあります。 

ところで膝の関節には何故水が溜まるのでしょう?それは、膝関節に強い炎症が起こり、いわゆる関節炎の状態になっているからです。 この水を抜く事の是非が、よく外来で話題になります。

基本的に水を抜く目的は、第一にどんな性状の液体が溜まっているのかの確認、第二に膝関節内部の徐圧です。大量の水が溜まっていると関節内の圧が高まり、さまざまな関節内組織への循環が阻害され、悪影響が出ますので徐圧目的で水を抜きますが、溜まっている水の量が少なければ抜く必要はありません。

また、関節炎が完全に治るまでは、水を抜いてもすぐに溜まってくるケースもありますが、これは別に水を抜いたから癖になったわけではなく、関節炎の為せる技です。要するに関節炎が改善すれば水は溜まらなくなりますし、痛みも軽減して来るのです。

我々の治療の目標は、この関節炎を如何にして鎮めるかという事になります。

体重を減らす、大腿四頭筋の筋力アップ、サポーターの装着、リハビリでの干渉波治療、関節炎治療薬の服用、ヒアルロン酸の関節内注射、足底板の作成など、様々なアプローチを駆使して我々はこの関節炎の沈静化に努め、患者さんの快適な日常生活の獲得を目指しています。 

2012年05月13日

ボラボラ島の記憶

この季節、夏が近づいて来ると、海なし県に育ったせいか無性に海に行きたくなります。

ボラボラ島は、「南太平洋の真珠」と言われ、フランス領ポリネシアの中で最も美しいと称賛され、タヒチ島を含む118の島々から構成されるソシエテ諸島に属する島です。

日本で「タヒチ」と言ったら、それはボラボラ島のことを意味していると言ってもいいかと思います。成田からの直行便でタヒチ島の首都パペーテまで11時間、さらにプロペラ機で1時間の飛行の末、目指すボラボラ島に到着です。

この島は、環礁に囲まれており、ラグーンではほとんど波が立たず、遠浅で、散在するサンゴ礁には無数の熱帯魚が群がっています。

私はかつてこの島に、ハネムーンで行ったことがあります。当時は日本からの直行便もなく、ハワイ経由でした。現地で宿泊したのは「水上コテージ」と言ってビーチから桟橋を歩いて渡って行く、海の中に建てられた家でした。ベランダにベッドを移動して足元に泳ぐ熱帯魚達を観察しながらお昼寝していると、海を渡る潮風がとても心地よくさわやかで、まさにいま自分が地上の楽園にいるという事を実感できます。

ホテルのプライベートビーチから見える場所にホテル所有の無人島があり、滞在中この島にピクニックに行く事になりました。ボート何艘かに分乗し、20人程で出かけましたが、お目当てはこの島にある水族館です。水族館と言っても立派なものではなく、島のビーチの一部をメッシュ状のプラスティックフェンスで囲い込み、この中に大量の熱帯魚が泳いでいるという施設です。はじめはスタッフから渡された魚の切り身を手に持って、海中でサカナ君達に食べさせていましたが、徐々に慣れて来てからは、シュノーケルと水中眼鏡を装着してフェンスの中を悠々と泳ぐ数匹の巨大なマンタの背中に乗り(両手でしがみつき(^▽^;))、しばしの間マンタと一緒に海中遊泳を楽しみました。

私たちのボラボラ島滞在は1週間でしたが、欧米人たちはほとんどが1ヶ月のバカンスを楽しんでおり、親しくなった仲間たちから「何故こんなに短期間で帰ってしまうのか?」「ここが気に入らないのか?」などと、彼らからすれば極めて素朴な疑問を投げかけられ、日本という国のいろいろな意味での貧しさを痛感したことがあります。

一つの例として、夏のバカンスは1ヶ月位取るのが当たり前、というような社会環境が整備されてはじめて先進国の仲間入りだし、人間に与えられた短い一生を本当に充実させ、楽しむことにも繋がるのではと感じています。

開業して23年目も半ばを迎えようとしておりますが、当院外来には開院以来通院されている患者さんもたくさんいらっしゃいます。

「あんた、私より先に逝っちゃだめだよ!」
「死ぬまで頼むね!」
「あんたの顔を見ると痛みが吹っ飛ぶよ!」

毎日さまざまなストレートな言葉をいただきますが、さすがに外来で長い期間接していると、どの患者さんも他人のような気がしなくなって来ています。

また、幼稚園児の頃来院した患者さんが、今度は自分の子供を連れて来るケースも増えて来ました。夫婦で来院などは当たり前、親子三代に亘っていらしている患者さんもよくお見受けします。

個々の患者さんの、病歴は言うに及ばず、問わず語りの中で家庭の事情までもいつの間にか知る所となり、最近の自分は既に、いわゆるホームドクターの領域に足を踏み入れているなと感じております。

こんな中、待合室で待っている間に、リハビリ中に、あるいは診察中に、体のさまざまな機能の衰えから急変する方も出て来ております。

私の基本的な考え方として、当院に治療を目的として来院された患者さんに対しては、整形外科領域という狭視野なとらえ方ではなく、社会的背景を持った1人の人間として敬意を表し、その健康状態全般に対して関心を持ち、健康をトータルにサポートしたいと考えております。

来院された患者さんの血圧を測定する事はその第一歩、簡単な検査ですがその日の体調を知る上でとても貴重な情報が得られ、リハビリ治療やブロック注射に伴うリスクを最小限に減らすことが出来ます。

患者さんの中には内科の先生に気兼ねして血圧測定を拒否される方もいらっしゃいますが、これは患者さんに私の真意が伝わらず、心から信頼されていない結果ではないかと深く反省しております。

また、お薬を処方している方に対して、大体3ヶ月に一回位、血液検査をお願いしておりますが、これはお薬の効き具合や、副作用が出ていないかなどのチェックをする為に最低限必要なものであり、ご自身の為でもありますので是非協力していただきたいと思います。

1人の町医者として足利市における自分の立ち位置を考えた時、それはホームドクターとして、

来院された一人一人の患者さんの話にしっかりと耳を傾け、説得力を持って希望を与え続け、かみ砕いた、素人の人にも分かりやすい言葉で、簡潔に病状の説明ができる事

  であり、これからもこの方針で地道に努力して行こうと考えております。

「わたなべ整形外科」は、平成元年10月に開業してから現在23年目に突入していますが 、流石にこの位長く同じ場所で診療していると、足利市民の中で「わたなべ整形外科」の名前を知らない人が減って来たのを感じます。 

開業当初、東京の慶応病院から代診の先生が来ても、駅から乗ったタクシーの運転手さんが病院の場所を知らずに苦労したというのもまるで昔話のようです。
 
こんな中、開業以来当院を受診した患者さんの数も4月21日現在で84,595人に達しており、なんと足利市の人口の半分以上の人が当院を訪れている事になります。

そんなわけで、私は街のあちこち、コンビニ、スーパー、ホームセンター、レストラン、本屋さん、ショッピングセンターなど様々な場所で、当院通院中もしくは通院歴のある方達にお会いすることになります。この際余りにもイメージダウンになるような服装ではマズイかなと考え、身なりにはそれなりに気を使うようにしています。また、こちらが完全に忘れていて、相手の方が自分を覚えているような場合、声を掛けられた時は取りあえず笑顔で挨拶し、当たり障りのない会話をすることになりますが、この場合長引くと危険です。

一番まずい対応は相手が自分に挨拶しているのに、私がそれに気付かず挨拶を返さなかったケースです。この場合相手は私の事を、お高く留まっている、挨拶したのに無視された、などと勘違いし不快な感情を抱くことになります。これだけは是が非でも避けなければなりませんので、街へ出る時はいつもそれなりの緊張感を持って周囲に気を配り、常に「わたなべ整形外科」の看板を背負っている位の気持ちで行動し、患者さんを発見した時はこちらから先に、さわやかな挨拶ができるように心掛けています。

そうは言っても最近徐々に記憶力の衰えを感じており、挨拶されてもすぐに思い出せない事もありますので、私を街で見かけて声を掛ける時は、御自身について多少のヒントを与えていただけると有難いし、会話がスムーズに進むかと思いますのでよろしくお願いします。

私はいつも患者さん目線での診療を心掛けており、街で会った時もお高く留まるつもりは毛頭ございませんので、気軽に声を掛けていただければ幸いです。

平成24年4月2日(月)、平成24年度診療報酬改定に伴い、新システムによる外来診療が始まりました。

今回も案の定、我々整形外科にとってかなり厳しい内容となりました。中でもリハビリが受けたダメージはかなり大きく、今まで通りのスタイルで診療していると、同じ治療行為をしていながら、収入が約三分の一程に減少するという内容でした。

現在日本では、医師が行う診察の初診料が2,700円、再診料が690円と決められていますが、アメリカでは大体、初診料1万円、再診料5千円位が相場です。

高校卒業後、難関中の難関と言われる医学部に合格し、6年間の勉強の後、年に一度の医師国家試験に合格した7,500人前後の医師たちが、関連病院や大学病院で少なくとも6年以上の研鑽を積んだ後、開業医として一般の患者さんの診療に従事しています。

来院された患者さんに対し、これまで勉強した知識と経験のすべてを結集して診察し、治療計画を作成する過程に対して支払われる初診料が2,700円というのは、個人的には納得行きません。患者さんにとっては安くて良かったねというレベルの話かもしれませんが、医師の技術料に対する評価がこれほど低い国は、先進国を見渡してもあまり例を見ず、外来は薄利多売となり、3時間待ちの3分診療を生む土壌となります。

今回の改定では、リハビリだけで来院された患者さんもすべて医師のチェックを受けなくてはならないというものですが、これは如何にも現場を知らない役人の発想だなと思いました。大体、再診料という表現が不適切であり、基本診療料のような表現に切り換えるべきかと思います。

毎回診察をしなくとも、医師が治療のプランを立て、それを訓練されたスタッフが実行しながらリアルタイムで観察し、定期的にチェックを入れるというこれまでの診療スタイルは、患者さんから見ても、医師の側から見ても、極めて合理的で、双方の無意味な時間的負担を軽減するという意味で、とても素晴らしいシステムだったと思います。

しかし厚労省の決めたルールに逆らっては今後の診療が続けられないという中で、我々はプラス思考に頭を切り替えることにしました。毎回ドクターチェックを受けてもらうことで、患者さんの超早期の体調の変化を見逃さず、適切な処置が可能になったと思います。また治療のプログラムが以前よりも確実に実行されるようになることが期待され、患者さんにとってはメリットも多くなるものと思います。

大混乱の初日を過ぎ、二日目、三日目と進むにつれ、患者さんもスタッフも少しずつ、この新しいシステムに慣れて来たように思われます。 

今後の課題としては、約1.5倍に増えたドクターの仕事量であり、院長・副院長の高齢化が進む中、体力的に大丈夫かなという心配です。

これからも様々なアイディアを採用し、徐々に改良を加え、すべての患者さんに納得していただけるような診療の流れに持って行きたいと考えておりますので、これからもよろしくお願い致します。