医療機関への期待と誤解
平成10年1月、患者さん用の無料送迎サービスを始めた際、喜んでいただけると思っていた私の予想に反して、患者さんや医師会関係者から様々な苦言を頂戴しました。
「こんなに外来が繁盛しているのに、送迎バスを運行して、もっと儲けたいのか?」
「それでなくても診察の待ち時間が長いのに、こんなサービスを始められたら、待ち時間がさらに 増えてしまうんじゃないのか?」
「バスで来た患者さんだけ特別扱いしてるんじゃないのか?」
などなど、いろいろ叩かれましたが、患者さん用の無料送迎バスサービスは当院を開院する前からの私の悲願であり、批判される方達には一人一人誠意をもって説明し、現在もなんとかバスの送迎サービスは継続しております。
一人暮らしのお年寄りや車の運転ができない方、家族のサポートが期待できない方、タクシーで通院するのは経済的に厳しい方など、さまざまな社会的背景を抱え、痛くて辛くて通院したいけれど通院できない患者さんが現実に存在します。
現在わたなべ整形外科に通院されていらっしゃる患者さんの内、大体毎日の外来総数の5%前後の方が当院の送迎バスサービスを利用されておられます。今後利用者が減少したとしても、送迎を希望される患者さんがたった一人でもいる限り、このサービスは経営的には全くの不採算部門ですが、これからも断固続けようと私は考えており、利用されている患者さんから、心のこもった感謝のお言葉を頂くたびに、決意を新たにしております。
そもそも医療というのは基本的に人助け、困っている人を助け、その心の支えとなって希望を与え続けることを使命とするものであり、「奉仕の精神」がすべての医療活動のベースに流れているべきであると考えております。この強い信念さえぶれなければ、さまざまな心無い批判にも耐えられるし、胸を張って活動できるのではないかと考えております。
さて当院では、祝祭日の午前中の診察や昼休みなしで利用可能なリハビリなど、バスの運行以外にも様々なサービスを実行していますが、これらはいずれも当院スタッフの協力なしにできるものではありません。スタッフ一人一人が「奉仕の精神」の意味を正しく理解し、医療機関で働くことに何らかのやりがいを見出してこそ実現できる事と思います。
また患者さんの描く理想の医療機関スタッフ像とは何か?
いつも優しく親切で、こぼれる自然な笑顔、清潔感あふれる身だしなみ、明るく爽やかに、そして病気に関する様々な相談に対し、親身になって専門的なアドバイスをしてくれる、などなど。
これら、医療機関スタッフに期待するものを我々がサラリと実行してはじめて、患者さんから感謝の言葉や、時には稀に、リスペクトの感情などが自然に生まれてくるものであり、我々は常にこの辺をわきまえた行動をとらねばと考えております。