院長渡辺邦夫ブログ

2024年09月30日

「街路樹の悲哀」

 

2024年9月12日午後、悲しい事件が発生しました。

   足利市寿町わたなべ整形外科東側の銀杏の街路樹が、突然根元から切り倒されたのです。足利市側からは何の事前通告もなく、福寿大橋北側の南北の道路に植えられた樹齢何十年という立派な銀杏の街路樹が高さ10㎝程の痛々しい切り株を残して姿を消しました。これは一部誤解されている方もいらっしゃるようですが、ビッグモーター事件と違って当院の建物が目立つようにという意図で、私が足利市に依頼して伐採してもらったというものではありません。さて伐採後も市側から何の説明もないので9月24日担当部署に問い合わせたところ、中橋架け替え工事に伴って発生が予想される福寿大橋北側の渋滞対策が目的であるとの由。さらには銀杏の枝が車の走行の邪魔にならないように、また車からの視界を広げることで幼児の交通事故被害を減らすなど、まったく説得力のない言い訳でこの樹齢30数年の立派な街路樹達は いとも簡単に根こそぎ伐採されてしまったようです。この決定を下した担当者に対しては怒りを通り越してただ呆れるばかりです。車の走行の邪魔になるというのであれば、中橋架け替えに要する3年半の間だけ、道路にはみ出した部分の枝を年に何回か剪定するという発想がこの担当者には無かったようです。

この背景には足利市の厳しい財政状況があり、街路樹のメンテナンスへの支出をゼロにするという意図が見え隠れします。メンテのお金が無いというのであれば、いきなり根元から切り倒すのではなく、有志のボランティアを募って枝の剪定作業に協力してもらうとか、それ以外にも様々なアイディアを募集するということは出来なかったのでしょうか。つい先日、テレビの全国放送で何回も繰り返し放送され恥ずかしい思いをしましたが、袋川の桜の木伐採問題に続き、足利市はまたしても理解不能な暴挙に出たという感じがします。折しも東京では神宮外苑銀杏並木伐採に関する熱い議論が戦わされていますが、足利市では議論の俎上に載ることも無く、いきなり伐採されてしまいました。市民不在の行政が粛々と実行されているという印象を受けました。繰り返しお伝えしますが、四季折々、市民に癒しを与えてくれていた素晴らしい銀杏の街路樹が、何の事前通告もなく伐採されてしまいました。突然伐採された銀杏たちの無念を思うと胸が痛みます。   2024.9.30

2024年09月21日

「足利に活‼」

 8月3日足利花火大会、8月4日桐生八木節祭り、そして8月18日群馬県立館林美術館にて大森暁生彫刻展と、立て続けに感動的な体験をさせて頂きました。足利で生まれ育った18年、強い郷土愛と故郷に対する誇りを持って36歳で故郷に戻り、1年間の足利日赤勤務後 わたなべ整形外科を開業しました。この足利を離れた18年の間、国の内外を問わず様々な研鑽を重ねて参りました。そのおかげで足利という街を、そして日本という国を多少客観的に見ることが出来るようになったと感じています。私が足利高校で学んでいた頃、近隣の太田市、佐野市、館林市、桐生市からは多くの越境入学者がいて、当時の足利高校のレベルの高さが伺えます。産業も繊維を中心に、とても盛んだった事が思い出されます。この頃の足利の繁栄ぶりを知る人間としては、今の足利の寂しい現状はとても残念で仕方ありません。

   こんな中、桐生八木節祭りに参加して軽いカルチャーショックを受けました。これまでは時代の流れで、同じように衰退の道を歩んでいる街として桐生をとらえていましたが、市民参加型の熱気あふれるイベント、そしてその運営方法を知り、頭の下がる思いがしました。桐生の企業経営者達のメセナ活動への深い理解、資金的な貢献、そして祭りの企画運営に市民が積極的に参加することで熱い祭りが実行されていました。実際に参加して目の当たりにしたのは、桐生市民が本当に心からこの3日間の祭りを楽しんでいる姿でした。誤解を恐れず言わせてもらえば、一瞬 リオのカーニバルが頭をよぎりました。

    極めて対照的なのは足利の花火でした。今年も大勢の人が集まり大盛況だったと思いますが、何か違和感を覚えました。このイベントは入場料を払って離れた場所から見物する催しという感じで、市民が具体的に運営に関わり、祭りの熱狂の中に身を投じて楽しむという一体感がありません。(翌日、花火大会会場のゴミ拾いには多くの市民が参加しますが。)

    足利の花火は商工会議所主催であり、運営が赤字だと聞いています。その赤字対策として今年、メンバーの提案で有料席を大幅に増やしたとの由。来年はもっと有料席を増やす予定だそうですが、それはちょっと違うのではないでしょうか。警備ボランティアの募集やクラウドファンディングの活用など、運営上のバランスシートを改善する方法はいくらでもあると思います。何れにせよ有料席を大幅に増やし市民から小銭を徴収するという発想は私には理解出来ません。

   また、先日訪問させて頂いた、館林市の群馬県立館林美術館には何もかも圧倒されてしまいました。75,000㎡(約22,700坪)の広大なエリアに、極めてスタイリッシュな建造物が佇んでいました。既に建物自体が美術品という趣で、ヨーロッパにありがちな美術館建設のコンセプトを感じました。一方足利市立美術館はどうかというと、集合住宅の1~2階に設置してある狭いスペースで、上層階住宅からの水漏れリスクに配慮して、貴重な美術品の展示には対応出来ないと聞いております。また以前は市民会館という、割としっかりしたコンサートホールがありましたが、老朽化が進んだという理由で取り壊され、未だ再建の具体的なプランは聞いておりません。幼い子供達を楽しませる施設、文化的な催しをする施設、居心地の良い公園、等々足利には無いものばかりです。本当にいろいろな意味で我が故郷足利は魅力のない街になって来たと感じています。足利市は市民から集めた血税の分配をもう少し厳しく再検討し、市民にとって子育てし易い魅力あるまちづくりの為に使って欲しいと考えています。        2024.9.19

私は大学2年の夏、3ヶ月間欧州全域をバックパッカーで旅して以来、これまで実に多くの国を訪れて来ました。タヒチ、モルディブ、プーケット、ビンタン、バリ、ケアンズ、シンガポール、香港、台湾、グアム、ハワイ、そして欧州各国。子供達が成人してからは欧州を訪れる機会が増えましたが、行くたびに強く感じるのは欧州各国の地方都市に住む人達がとても元気で、地方の(食)文化をしっかりと継承し、日々の生活を大いにエンジョイしているということです。2024年2月現在、日本の農業従事者の平均年齢は68.4歳(この内70歳以上の比率は58.7%)、米農家に限定すると平均年齢70歳です。重労働、低収入、天候などに左右される不確実性などの理由で農業を目指す若者が減り続ける日本からすると、想像もつかない豊かな農業ライフが欧米では展開されています。この背景にあるのは食料安全保障の観点から、各国政府もしくはEUが強力に農業支援を推進しているということであり、日本政府の農業切り捨てとも思える常軌を逸した農業政策との違いが際立ちます。

先日初めて訪れたシチリア島、ここの住民達は食料の完全な自給自足が実現されていることを誇りとしており、食料安全保障の観点からすると正に優等生と言えるかも知れない。彼等は実によく喋る。南イタリア人の特徴なのかも知れないけれど、何しろ楽しそうに大きな声で会話している光景が目につき、側から見ていても実に幸せそうなオーラがみなぎっている。彼等は毎日の生活を楽しみ、隣人達との会話を楽しみ、Are you happy ?と聞かれたら、即座に I’m happy. と返して来る雰囲気が漂っていた。マーケットには豊かな海産物、そしてオリーブ、オレンジ、ピスタチオ、アーモンドその他数多くの農産物、更には美味しいワインが溢れ、まさに地産地消が実現されており、米国ラトガース大学の研究者達から「世界で最初に飢えるのは日本 」と指摘され、隣人とのコミュニケーションも希薄で、隣にどんな人が住んでいるかも知らずに生活している日本とは別世界である。

こんな中、政府が主張する我が国の食料自給率37%はまったく事実に反しており、その大半を輸入に頼る、種や肥料、飼料まで考慮すれば、我が国の自給率はひとたび局地的な核戦争が勃発した場合、食料生産の減少と物流停止の影響で10%以下になるという東大名誉教授鈴木宣弘氏の主張は傾聴に値すると考えます。地方の豊かな食や伝統文化を守り、日々の生活を心から楽しむことの出来る地方都市を復活させ、住んで楽しい「まちづくり」とは何か、行政主導の都市計画ではなく、住民一人ひとりがもう少し視野を広げ、アイデアを出し合い、話し合い、本気で考えるべき時が来たと感じます。             2024.9.8

2024年8月3日(土)、今年も足利花火大会を見物しました。毎年前日の夕方、当院スタッフが大会本部席付近の土手に少し大きめのビニールシートを敷いて場所取りをし、ここに仲間が集まり寝転んで目の前で繰り広げられる花火を堪能するというイベントです。以前一度だけ桟敷席で見物したことがありましたが、あまりの居心地の悪さに耐えられず翌年からはまた元のビニールシートでの見物に戻りました。今年も花火の出来栄えはとても素晴らしいもので、ドドーン、パリパリという音を体全体(特にお腹)で受け止め、眼前に広がる眩いばかりの、宝石を撒き散らしたようなパノラマに酔いしれました。 翌8月4日はお隣の街で開催される桐生八木節祭りに、友人ファミリーと2家族で行って来ましたが、初めて参加した私にとってこの祭りはかなり衝撃的な体験でした。15年前に足利から桐生に移住した友人の案内で祭り会場へ侵入しましたが、そのあまりの盛り上がりに終始圧倒され続けました。大きな櫓が何ヶ所も、封鎖された道路中央に聳え立ち、その上に陣取った演者達が笛や太鼓の伴奏を行い、これに合わせて5分位?の間隔で歌い手が次々に交代しながら大声を張り上げ八木節を歌い続けます。その櫓の周りには大勢の大衆踊り手が群がり、5〜10人位の小集団で円を構成し、この集団がまるで風車のようにグルグルと同じステップを踏みながら踊り回るという光景でした。途中から土砂降りの雨に見舞われましたが、この踊る集団はまったく意に介さずお囃子に合わせて、まるでトランス状態に陥ったように踊り続けていました。これだけ市民を熱狂させる演出には、ただただ感動し頭の下がる思いがしました。1964年に始まったこの祭りを体験して一番強く感じたことは、まさに市民参加型の祭りであり、市民が本当に一つになって心から祭りを楽しんでいるという事でした。さらに感じたことは、この街には昭和の原風景が残っており、古き良き時代のコミュニティーがしっかりと機能しているなということ。隣近所がとても親しく交流している為、近所のおじさん、おばさん達が楽しみながら子育て支援してくれる、災害にも強い街という印象を受けました。足利と桐生、二つの街の一大イベントを2日間に亘って体験した印象としては、足利の花火大会は有料席が例年に比べて激増しており、花火自体は素晴らしかったのですが、如何にも利益を優先したイベントであり、河原や土手にシートを敷いてのんびり花火を楽しみたいという庶民のささやかな楽しみを奪ってしまっていると感じました。一方の桐生祭りは完璧な市民ファースト、市民参加型のイベントであり、普段はシャッター通りだという商店街の多くの店に活気が溢れ、子供達の喜びそうな屋台が所狭しと立ち並び、多くの市民が心から楽しみ交流を深める場となっていると感じました。           2024.8.10  

厚生労働省(厚労省)は保険診療と保険外診療の併用を原則禁止しており、もし同日に併用した場合これを混合診療とみなして患者さんはその費用の全額を支払う義務があるとしております。こんな中、昨年からインフルエンザの予防接種が問題になっています。厚労省の通達によると、予防接種は保険外診療です。保険診療日に接種すると混合診療に該当しますので別の日に、接種だけを目的として再度来院させて下さい、という内容でした。ただし新型コロナワクチン接種に関してはこの限りにあらず。更には、諸般の事情により別日の来院が困難な患者さんには接種してもよろしい。但し当日の保険診療行為に関しては基本診察料を患者さんに請求してはいけません、という通達でした。要するに政府は接種日、医療機関側に基本診察料はお支払いしません、「それでも良ければ予防接種、お好きにどうぞ!」ということです。患者さんファーストをモットーとする当院としては、家族のサポートもなく自力での来院が困難な患者さんに対して、別の日にもう一度予防接種だけの為に来て下さいと言えるはずもなく、今年からは診察料請求無しで保険診療来院時に接種可とすることを決定しました。厚労省の政策上の疑問点は混合診療以外にも多数ありますが、クスリの欠品問題も含め当院として今一番頭を悩ましているのは、医療非課税問題です。これは院内処方で頑張っている医療機関の経営を極度に圧迫しています。簡単に言うと100円のクスリを消費税込み110円で薬問屋から購入し、患者さんには100円でお渡ししなければならないという問題です。薬価差益も無くなり厳しい経営を迫られる中、当院ではこの件だけで年間3,000万円以上の減収となっています。一刻も早く正常な状態(薬購入時も100円)に改善してもらいたいものです。さて今年のインフルエンザ感染状況はCOVID-19の影響もあってかなり早い時期から深刻なものとなりつつあります。皆さん、今年は少し早めに接種することをお勧め致します。当院におけるインフルエンザ予防接種は予約無しで受けることが出来ます。ワクチンは接種後2週間で効き始め、その後5ヶ月間効果が持続します。厚労省も今年はインフルエンザワクチンの需要が高まることを予想し、過去5年で最大量(約6300万人分)のワクチン供給を予定していますが、2017年、2018年のような全国的なワクチン不足が生じる前に接種することを目指しましょう。 2023.10.10

人手不足が大きな話題になっている昨今、政府が進める「働き方改革」の影響もあって様々な職場が困った状況になっています。当院でもご多分に漏れず昨年位から就職を希望する若者が激減中です。今年こそはと気合を入れて、初任給を市内で一番になるように設定しましたが、反応はいまいちでした。そこで学校の進路指導の先生方に不人気の理由をお聞きすると、当院の診療体制にあるのではという可能性を告げられました。当院の診療体制は1989年の開業以来、幾多の変遷を経て現在の形に落ち着いていますが、確かに他の医療機関とは一線を画すものとなっています。何故この形に落ち着いたかというと、その一番の理由は「患者さんファースト」という当院の基本理念にあります。当院テーマソング4小節目で歌われる通り、主役は患者さんという考え方です。 受付時間は、夕方会社が終わってからも間に合うようにと、開業当初の6時から6時半に、土曜の午後しか来られないという方の為に、土曜日は午後6時まで(木曜日は午前のみ診療)となり、また祝祭日は午前中のみですが診療を行っています。これら一連の診療時間変更への反響は我々の想像をはるかに超える形で現われ、「おかげさまで」「ありがとうね」「助かります」等々、様々な感謝のお声を日々頂いております。しかしながら、これら一連の医療への取り組みは若者達からは不評のようです。給料は多少安くても早く帰宅出来る医療機関が若者から人気という話を聞き、妙に納得してしまいましたが、その一方で強い違和感も覚えました。そもそも医療機関で働きたいと考えた原点はどの辺にあるのか、初心に帰ってその頃の純粋な気持ちを思い出して欲しいと考えました。初代足利日赤院長小野康平先生に頂いた著書「医の奉仕」にある如く、医療機関で働く人間に求められるのは奉仕の精神だと思います。さまざまな症状を訴え来院される患者さんの助けになりたい、困っている人に寄り添って何かサポートしてあげたいという気持ちが高じて医療機関を就職先として選んだのではないでしょうか?私は開業以来掲げている「笑顔」「親切」「信頼」のモットーに共感し、患者さんとの感動の時間を共有したいと考える人達と共に仕事をしたいと考えています。さて当院では開業以来、少し多目にスタッフを採用してこれまでやって来ましたが、その理由は多目のスタッフで上手にシフトを組むことで早番・遅番・交代制などを活用し、より快適な勤務環境が実現出来ると考えるからです。こころざし高き若者よ、いざ集え わたなべ整形外科へ                                 2023.9.25

2023年05月08日

介護脱毛という考え方

 皆さん介護脱毛という言葉をご存知でしょうか?これは自分が介護される立場になった時に備えて行うデリケートゾーン(VIO)のムダ毛処理のことです。これまでVIO脱毛は20代を中心とした若年層に人気がありましたが、ここ数年都内では40~50代の、介護や老後を意識する世代に注目されるようになって来ました。年齢にこだわる理由は、脱毛で一般に使用されている医療用レーザーマシンがメラニンに反応するタイプの為、白髪になってからでは手遅れだからです。介護脱毛を考えている方は、アンダーヘアに白髪が混じる前に済ませることをおすすめします。

 さて欧米など海外では一般的なVIO脱毛ですが、これは単に美容目的だけではなく衛生面を考えて、エチケットとして行われていることが多いようです。VIOのムダ毛を減らすことにより、清潔で衛生的な環境を維持することができ、感染症のリスクを減らすことにも繋がります。また介護を必要とする方にとって、VIO脱毛は自己ケアの一環としても有効な施術です。介護に従事する方に対して清潔な環境を提供することで排泄の介助がしやすくなり、介護者の負担は大幅に軽減され介護の質を向上させることができます。この為、介護施設や病院など公共の場でも、安心して過ごせるようになります。

 ここでVIO脱毛について、少し現実的な話をしたいと思います。様々な施設で脱毛を受けるチャンスはありますが、やはり一番のおすすめは医療用レーザー装置を設置しているクリニックかと考えます。(当院二階、美容皮膚科ボヌールでもVIOを含む医療レーザー脱毛が受けられます。)エステサロンで使用されている光脱毛器に比べ、圧倒的に少ない施術回数で満足の行くレベルに到達することができます。 知っておくべき課題として、VIOは他の部位に比べてレーザー照射に伴う痛みが多少強いこと(但し回数を重ねるごとに痛みは軽減して来ます)。施行回数も、発毛密度や毛の太さ、皮膚の色素沈着の強さなどに左右されることが多く、他の部位より少し多くなること。脱毛が完了してしまうと毛を生やす毛根が破壊されている為、元の状態には戻せないなどがあります。こんな中、ハイジニーナと言ってVIOの毛をすべて脱毛してツルツルにすることを希望する方もいますが、温泉施設などで他人の目が気になるという方は、V(ビキニ)ラインの一部のみ自然な形で残すという選択肢もあります。                  2023.5.8 

    

2023年01月25日

クスリの欠品について

2年程前からクスリの欠品が目立つようになりました。この為我々は、診察あるいは会計の際、「処方薬が変更になりましたが効き目は一緒です。」という説明を毎日何回も何回もする羽目になっています。皆さんは何故こんなことになってしまったのかご存知ですか?このキッカケとなったのは福井県の小林化工(245人の健康被害を起こし2人が死亡)や富山県の日医工といった後発医薬品(ジェネリック)メーカーによる不祥事でした。この不祥事が明らかになったあと業界団体が呼びかけた自主点検の結果3000品目以上の医薬品に製造工程での問題が見つかり、クスリの供給停止や出荷調整が発生しました。つまり市場から大量のジェネリック医薬品が姿を消したという訳です。そのあおりを受け、良質のジェネリック医薬品、さらには先発医薬品にまで需給ひっ迫が連鎖し、問屋にクスリを注文してもいつ入荷するか分からないという状況になってしまっているという次第です。クスリが足りないのであれば各メーカーともこれをチャンスととらえ増産体制に入ればよい訳ですがその動きはまったく見られません。その理由は厚労省の薬事政策にあると考えられます。これまでは2年に一度薬価の見直し(薬価の引き下げ)が行われておりましたが2021年からはこれが毎年の見直しとなり、薬価が毎年下げられてしまう為、わざわざ設備投資して生産ラインを拡充してもわずかな利益しか期待出来ないし、クスリの種類によっては作れば作る程赤字が膨らむという構図になっております。この為、生産現場から撤退し廃業するジェネリックメーカーも出て来ているというのが厳しい現状です。

さて、これら一連の問題の根本的な原因は何かと考えると、厚労省が財務省からの医療費削減圧力に唯々諾々と従い国民の生命・健康を維持する為の支出を削り続けているという点であると私は考えます。常軌を逸した薬価引き下げの結果、メーカー側は少しでも利益を確保するため製造工程における品質管理をなおざりにしたのではという推測も成り立ちます。更に言わせてもらえば、採算割れするほど薬価を引き下げるのであれば、これと同時進行で、ジェネリックメーカーの製造工程で発生が想定される不祥事に対しての監視を強化し、厳しく指導すべきであったのにこれを怠たり2人の犠牲者を出した厚労省の罪は極めて大きいと考えます。

                              2023.1.25

2022年10月15日

政治家の世襲について

2022年10月4日、岸田首相の31歳の長男が政務担当の首相秘書官に抜擢されました。将来の世襲を見越した人事と見られますが、官邸側は「適材適所で総合的に判断した」と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返しています。選挙で選ばれたわけでもなく、難関な試験に合格したわけでもない若者が、ただ総理の息子というだけで選ばれるのは、正に官邸を私物化するようなものであると私は考えます。

そもそも日本では国会議員全体の3割が世襲、自民党に限れば4割が世襲です。これに対して世界の先進国を見ると世襲議員の割合は1割以下と言われており、日本は世界でも稀にみる世襲議員の多い国と言えます。平成元年(1989年)~令和4(2022年)の33年間を振り返ると実に20人の首相が誕生しましたが世襲でない首相はたったの6人でした(宇野宗祐、海部俊樹、村山富市、菅直人、野田佳彦、菅義偉)。つまり総理大臣の世襲率70%という異常さです。この背景にあるのは先進国に比べて選挙の投票率がとても低いことかと思います。投票率が低ければ低いほど既得権益を握った人達に推された候補者が当選しやすくなり、既得権は温存されます。

 また政治を家業と考える政治家たちは、何としてでもこの美味しい家業を子孫に残したいとの一念で動き、後援会組織と一丸となって世襲議員の誕生に奔走します。この結果、前途有為の新人候補は当選しにくくなり、国会は老獪な利権政治家の巣窟と化し国家運営は行き詰まり、現在まで30年間続く国家の危機的な状況を生み出していると考えます。さて国家、国民の為に奉仕するという強い意志を持ち、私利私欲に走らず、誠実で高潔、そして強い正義感を持った政治家が選ばれる為には、先ず選挙の投票率を欧米先進国並みにアップすることが喫緊の課題と考えます。政権与党にとって一番都合がいいのは、選挙なんか行っても世の中何も変わらないさ、まともな候補者が見当たらないなどと、政治に対する興味を失わせ、国民が投票に行かないという行動を取ってくれることです。シンガポール、オーストラリア等々厳格な罰則を設けて義務投票制を採用している国もありますが、我々国民は無能な政治家に国のかじ取りを委ねることで起こる現代日本の悲劇的な状況を厳しく正視し、もっと積極的に政治と向き合い、自主的な投票率アップに取り組みたいものです。  

最後に一言「子孫に美田を残さず」老子                    

 政治の世界では特に傾聴に値する言葉かと思います。   2022.10.14         

① 誠実で高潔、正義感が強く、決して嘘をつかないこと

② 常に謙虚で高い知性を持っていること

③ 誰に対しても親切で平等であること(人種、性別、年齢、宗教)

④ 視野が広く常に高所から物事を見ることが出来ること

⑤ 常に国民目線であること(上から目線、下から目線はあり得ない)

⑥ 初心を忘れず考えがぶれないこと

⑦ ユーモアのセンスがあること

⑧ 英語が普通に話せて、基本的に外人コンプレックスが無いこと

⑨ 人間的に魅力があり、年齢、性別、国籍を問わず愛されキャラであること

⑩ 論理的思考と説得力のある簡潔なスピーチが出来ること

⑪ 議論に強く、常にスマートで上品な言葉でのディベートが出来ること

⑫ 既成概念に囚われず常に柔軟な発想で物事を処理出来ること

⑬ いつも変わらぬ、包み込むような包容力があること

⑭ バランス感覚に優れていること

⑮ 博学であること(特に歴史に造詣が深い)

⑯ 既得権益にしがみつき努力しない人が大嫌いなこと

⑰ 時代を読む先見性に優れていること

⑱ 知識人でなく教養人を目指していること

⑲ アイディアが豊富でそれを形にすることが得意であること

⑳ 常に上機嫌で笑顔を絶やさず、聞き上手であること

㉑ 日本の国を愛し、日本人であることに誇りを持っていること

㉒ 様々なジャンルの専門家と交流があり、リスペクトし合いそのサポート体制が構築されている

㉓ emergencyに対する対応能力が優れていること

㉔ 肩書きや名誉を求めずそれらに無頓着であること

㉕ 精神的にも肉体的にも極めてタフであること

㉖ 狡い人、卑怯な人が極度に嫌いであること

㉗ 自分より凄い人、尊敬できる人を知っていて常にその人に近づこうと努力していること

㉘ 情報収集のアンテナが高く、常にupdate で正確な情報をバランスよく入手していること

㉙ スポーツを愛し定期的にゴルフ以外のエクササイズをしていること

㉚ 高齢者を敬い、心からのサポートを惜しまないこと

㉛ 官僚の作文を棒読みせず、自分の頭で考え、自分の言葉で話すことが出来ること 

2022.7.7