院長渡辺邦夫ブログ

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2024年09月11日

「欧州と日本の地方都市を比較して思う事」

私は大学2年の夏、3ヶ月間欧州全域をバックパッカーで旅して以来、これまで実に多くの国を訪れて来ました。タヒチ、モルディブ、プーケット、ビンタン、バリ、ケアンズ、シンガポール、香港、台湾、グアム、ハワイ、そして欧州各国。子供達が成人してからは欧州を訪れる機会が増えましたが、行くたびに強く感じるのは欧州各国の地方都市に住む人達がとても元気で、地方の(食)文化をしっかりと継承し、日々の生活を大いにエンジョイしているということです。2024年2月現在、日本の農業従事者の平均年齢は68.4歳(この内70歳以上の比率は58.7%)、米農家に限定すると平均年齢70歳です。重労働、低収入、天候などに左右される不確実性などの理由で農業を目指す若者が減り続ける日本からすると、想像もつかない豊かな農業ライフが欧米では展開されています。この背景にあるのは食料安全保障の観点から、各国政府もしくはEUが強力に農業支援を推進しているということであり、日本政府の農業切り捨てとも思える常軌を逸した農業政策との違いが際立ちます。

先日初めて訪れたシチリア島、ここの住民達は食料の完全な自給自足が実現されていることを誇りとしており、食料安全保障の観点からすると正に優等生と言えるかも知れない。彼等は実によく喋る。南イタリア人の特徴なのかも知れないけれど、何しろ楽しそうに大きな声で会話している光景が目につき、側から見ていても実に幸せそうなオーラがみなぎっている。彼等は毎日の生活を楽しみ、隣人達との会話を楽しみ、Are you happy ?と聞かれたら、即座に I’m happy. と返して来る雰囲気が漂っていた。マーケットには豊かな海産物、そしてオリーブ、オレンジ、ピスタチオ、アーモンドその他数多くの農産物、更には美味しいワインが溢れ、まさに地産地消が実現されており、米国ラトガース大学の研究者達から「世界で最初に飢えるのは日本 」と指摘され、隣人とのコミュニケーションも希薄で、隣にどんな人が住んでいるかも知らずに生活している日本とは別世界である。

こんな中、政府が主張する我が国の食料自給率37%はまったく事実に反しており、その大半を輸入に頼る、種や肥料、飼料まで考慮すれば、我が国の自給率はひとたび局地的な核戦争が勃発した場合、食料生産の減少と物流停止の影響で10%以下になるという東大名誉教授鈴木宣弘氏の主張は傾聴に値すると考えます。地方の豊かな食や伝統文化を守り、日々の生活を心から楽しむことの出来る地方都市を復活させ、住んで楽しい「まちづくり」とは何か、行政主導の都市計画ではなく、住民一人ひとりがもう少し視野を広げ、アイデアを出し合い、話し合い、本気で考えるべき時が来たと感じます。             2024.9.8