医療問題

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2012年05月20日

膝の水を抜くと、くせになりますか

外来で患者さんの診察をしていて痛感するのは、 様々な迷信や昔からの言い伝え、誰か医師以外の、物知り顔の人の断定的な情報などに惑わされている方がとても多いという事です。

また、新聞、雑誌、テレビなどで得た情報を鵜呑みにして、頭でっかちになって来院される方もいらっしゃいます。「昔からの言い伝え」には時々、真理をえぐった鋭いものもありますが、そもそも日本のメディアの伝える情報なんて、偏った一方的な情報ばかりで、話半分くらいに聞いて置かないと、ただただ振り回されるだけだと思います。

「タブーの正体!」川端幹人著 (ちくま新書)
を読むと、この辺の事情がよく分かります。

さて、はじめて来院される方の診察は、まずこの辺の誤解、思い込みを解きほどく作業から始まります。とは言え何回か来院し、お互いの信頼関係が築かれてからはサクサクと進むことになりますが、初対面から私のことを心から信用してくれる人などいませんから、この作業は結構苦労することがあります。

また最近の新たな動きとしては、あらかじめ当院のホームページにアクセスし、中には「院長ブログ」まで読まれてから来院するという方が増えて来たという事です。このような患者さんは、私の事をある程度下調べした上での来院ですので、初対面から話がとてもスムーズに進むことがあります。 

ところで膝の関節には何故水が溜まるのでしょう?それは、膝関節に強い炎症が起こり、いわゆる関節炎の状態になっているからです。 この水を抜く事の是非が、よく外来で話題になります。

基本的に水を抜く目的は、第一にどんな性状の液体が溜まっているのかの確認、第二に膝関節内部の徐圧です。大量の水が溜まっていると関節内の圧が高まり、さまざまな関節内組織への循環が阻害され、悪影響が出ますので徐圧目的で水を抜きますが、溜まっている水の量が少なければ抜く必要はありません。

また、関節炎が完全に治るまでは、水を抜いてもすぐに溜まってくるケースもありますが、これは別に水を抜いたから癖になったわけではなく、関節炎の為せる技です。要するに関節炎が改善すれば水は溜まらなくなりますし、痛みも軽減して来るのです。

我々の治療の目標は、この関節炎を如何にして鎮めるかという事になります。

体重を減らす、大腿四頭筋の筋力アップ、サポーターの装着、リハビリでの干渉波治療、関節炎治療薬の服用、ヒアルロン酸の関節内注射、足底板の作成など、様々なアプローチを駆使して我々はこの関節炎の沈静化に努め、患者さんの快適な日常生活の獲得を目指しています。