院長という立場
知り合いの社長さん達と飲む機会があります。そんな時いつも感じるのは、彼らには自分に比べ、自由に使える時間がたくさんあるという事です。平日堂々と社用でゴルフをプレイし、海外で行われるオリンピックの見物にも出かけることが出来ます。
有能な経営者というのは、自分が不在でもきちんと動く組織を創り上げた人であると、誰かに言われたことがありますが、当院のような小規模の医療機関には当てはまらないようです。
私の場合、毎朝8時半までに出勤し、朝のミーティング、そして9時から夕方の6時半の受け付け終了まで、ほとんど一歩も外に出ることもできず、家に戻るのは最後の患者さんが帰り、会計が閉まり、すべての業務が完了してからですから、日によっては相当遅くなります。
また昨年9月からは祝祭日の午前診療も始めたので、プライベイトな時間は減る一方です。今書いているブログの原稿も、院長室で打っていますので、わたなべ整形外科で過ごす時間は、増える一方です。
夏にはいつも私と福先生と交代で1週間ずつ、慶應病院からかなり優秀な代診の先生をお願いして夏季休暇を取りますが、受付まで来た患者さんの中には、院長不在が分かると、リハビリも受けずに帰ってしまう方も大勢いらっしゃいます。
この仕事の特殊性を説明するのにとても有効な事例かと思いますが、何しろ一般企業の社長さん達のような訳には行きません。
また、一流企業の役員クラスになると、最前線で一兵卒のような仕事をする機会は殆ど無くなり、仕事で交流する相手もかなり絞り込まれ、会話もスムーズに進行することと推察いたします。
しかしドクターは全く違います。いくら経験を積み、知識が増え、診断、治療の技術が向上し、ついでに年齢を重ね、円熟期に入っても、そんなことは一切お構いなし、毎日、常に最前線の一兵卒です。
大きい会社のように部下たちが最初に面会し、絞り込んでくれる事もなく、時々とんでもない患者さんに遭遇し、途方に暮れることがあります。
福先生がよくおっしゃっていますが、患者さんはドクターを選べますが、我々は患者さんを選ぶことはできません。しかし、数ある医療機関の中から我々の施設を選んでいただいた患者さんに対して、最大の満足を得ていただけるように努力すべきであるという責任は感じています。
確かに、やり甲斐はあります。自分を信頼して通って来ていただいている多くの患者さん達と接していると、医師という職業を選んでよかった!としみじみ感じる場面は多々あります。しかし人生の大半をこの狭い空間で過ごす、という現実も受け入れなければなりません。
自由にのびのびと、自分の時間を創り出し、たった一度しかない一生を大いにエンジョイしている仲間たちを見るにつけ、少々複雑な想いが忍び寄る秋の夜長でした。
長い文章、最後までお読みいただきありがとうございました。