わたなべ整形外科関連

2013年08月24日

代診のドクター

毎年7月から10月の間にわたなべ整形外科のスタッフは、交代で夏休みを取ります。平成元年の開業以来、当院はお盆休みなしで通常通りの診療を行っている関係で、スタッフの夏休みは8月に集中することなく、適度に分散して取られています。私と福先生も毎年この時期、1週間ずつ夏休みを取らせていただいております。医療機関によっては、ドクター休診の際、研修会出席の為とか学会出張の為とか、色々苦しい言い訳をしている施設もありますが、当院では私の方針で、患者さんに正直にお伝えし、休みをいただいております。

さて我々が交代で夏休みを取る際は、毎年東京の慶応義塾大学から代診のドクターを招聘しております。この際どんなドクターが来てもいいという訳には行きません。当院に通院されている患者さんはドクターを見る目が肥えているので、ただ医師免許を持っているというだけでは当院の代診は務まりません。医療水準の高い優秀なドクターという事は大前提、さらに重要な資質はハートフルで優しく、患者さんの訴えに根気よく耳を傾け、丁寧に説明をしてくれる親切なお医者さんということです。こういう厳しい条件をクリアした若き医師たちが、今年も我々の代診を務めてくれましたが、患者さんからはかなりの高評価をいただけたようです。またドクターの選考基準には、特に容姿端麗という項目は設けていないのですが、時にはかなりなイケメンの先生が来ることもあり、患者さんだけでなく当院スタッフ達からも、今年はどんな先生が来るのかなあと熱い期待が寄せられているようです。

患者さんの中には、「なんだ、今日は院長いないのか」などと言って、リハビリもせずに帰ってしまう方もいらっしゃいますが、私としてはかなり苦労して選抜した、選りすぐりのドクター達をお呼びしておりますので、いつもと違った視点から自分の患っている疾患を診てもらえるラッキーチャンスとして捉え、今後はもっと積極的に代診のドクターの診察を受けていただければ幸いです。

また毎週土曜日には、リウマチ内科、循環器内科、手の外科、膝の外科など、それぞれ学会のシンポジストとして活躍されているレベルのドクター達を当院にお招きし、患者さんの診察をしていただいておりますが、これは足利市民として大きな幸せであり、皆さんにはもっと積極的にこの機会を活用していただきたいと思います。この際、彼らとの情報交換を通じて最先端の医療を肌で感じ、学習する機会が得られることは、地方都市に住む一開業医として、個人的にとても大きな刺激であり、喜びでもあると考え、この幸せを噛みしめ日々感謝しております。

2013年06月17日

出会い

世界の人口は既に70億人を超え、毎年約1%ずつ増加する中、わずか100年前後の人生で出会える人の数は果たして何人位いるのだろうか?ただすれ違うだけの人は多くいるが、言葉を交わし親交を深めるレベルまで行く人の数はとても少ない。

平成元年10月、わたなべ整形外科を開業して以来2013年6月16日現在で、87589人の患者さんが当院を受診していますが、中には開業以来通院されている方もいらっしゃいます。1週間に一回、2週間に一回、1ヶ月に一回など来院頻度は病状によってまちまちですが、長く定期的に通っていらっしゃる方は、お互いその性格も知り抜いており、とても他人とは思えぬ親近感を感じています。

昔から「遠くの親戚より近くの他人」と言いますが、とても愛着を持って肉親に対するような接し方になっている患者さんも数多く存在します。縁あって当院を受診された方達と、このように長いお付き合いになった事には、最近何か運命的なものを感じます。また、何の因果か当院を担当することになり私と出会う羽目になった薬のメーカーさん、問屋さん、様々な出入りの業者さんなどなど、本当にビジネスを超えた、心の通う親密なお付き合いをさせていただいている方達が大勢いて、職員も含めこの人達のお蔭で我々の組織は成り立っていると、常日頃感じ、感謝しています。  

さて毎日様々な出会いがありますが、その中には、長くお付き合いしたいなと感じる方とそうでない方がいらっしゃいます。長く人生を歩んでいると、若い頃より多少は人を見る目が肥えて来たと自負しておりますが、このささやかな鑑識眼を通して同好の士を集め、交流の輪を広げ、人生を更に楽しい充実したものにして行きたいと考えています。

若い人によく 「出会いを大切にしなさい」と話します。ビッグな人と出会った時、その人の凄さが解る人は、まだ自分が成長途上にあったとしてもビッグになる素質を持っており、その人から認められ、多くの教えを受け、今後益々成長する可能性を秘めた人であると思います。これに反して、自分のポテンツが低い人は、せっかくの貴重な出会いがあっても、相手の凄さが理解できず、相手からも評価されず、無駄な出会いとなってしまうことになります。
 
せっかくの出会いを無駄にしない為には、普段から書に親しみ、常に謙虚さを失わず、学ぶ姿勢を前面に出し、誰に対してもフランクに接する習慣を身に付けることであり、その先には前途洋々たる人生が開けて来るものと確信しています。こうして自分の、人間としての魅力が増して来ると、自然と周りに人が集まって来ますが、その中から生涯にわたり付き合える友が見つかれば最高の幸せと考えています。

2012年12月11日

目指すべき道

「わたなべ整形外科スタッフの対応は素晴らしい!」と、患者さんからお褒めの言葉をいただくことがあります。
 
そんな時私は、まずは素直に「ありがとうございます。」と、我々の仕事ぶりを評価して頂いた事に対して、心からのお礼を申し上げます。そしてこの時いつも感じるのは、「我々は別に特別な事をしているつもりはない。医療機関のスタッフとは本来こうあるべきであると考え、行動しているだけであり、我々からすればごく普通の事をしていて褒められるのは、何かちょっと申し訳ないような気がする。」という事です。

病を抱え、少しでも楽になりたいという思いで来院された患者さんに対して、全くの健常人に対するのと同じように接するのではなく、いつもより気配り心配りのレベルを少しだけアップして優しく接するというのは、医療機関のスタッフにとって、基本中の基本であり、これができない人は適性がないということで、早目に転職した方がいいと私は常々考えています。

   A good doctor is a doctor who continuously gives hope to the patient. 

このフレーズは、私が患者さんを診察する時にいつも心がけている一つのポリシーです。頑固な痛みが続き、ともすれば塞ぎ込んで絶望的になりがちな患者さんを診る時などは、とりわけその重要度が増して来ます。根治が困難な患者さんに対して「あなたの病気は治りません!」「年のせいです!」などと突き放すのではなく、その困難な状況の中で、如何にして患者さんのQOL(生活の質)を高めることが出来るかを共に考え、明日への希望を与え続けるのが医師の使命と考えています。

いい加減な、その場しのぎの気休めを言うのではなく、自身の抱えている病気についての正しい情報を提供し、患者さんがその現実から目をそらすことなく前向きに受け入れ、投薬、注射、リハビリなどの持つ効能効果、更にはその副作用まで含めて十分理解し、納得した上で治療を受けていただくという事をいつも目指して私は患者さんと接しています。

また私は笑いの持つ様々な効用を確信している者の一人ですが、院内至る所で笑顔と笑い声の絶えない、まるで病院にいる事を忘れてしまうような現在の当院の雰囲気をこれからも大切にし、患者さんに対して、病気に立ち向かう勇気と将来への希望を与え続け、「あなたの診察を受け、あなたの笑顔を見ると何だか元気になれる。」と言ってもらえたら、それこそ医師の本懐と考えています。

ここ2~3年、雑誌やテレビなどのマスメディアを通じて、IT企業の豪華な社員食堂をテーマとした記事やドキュメンタリー番組を流す機会が増えています。これはマスメディアと企業と、相互の利害が一致した為に実現したものと思われますが、個人的にはちょっと違和感を覚えています。企業側からすると質の高いスタッフを獲得する為に、会社の福利厚生施設の充実ぶりをアピールするのが目的だと思いますが、見ているうちに段々不愉快になって来ることがあります。

その大小に関係なくどんな会社も、トップに立つ人間は、従業員の待遇を少しでも良くしたいと願っていると思いますが、不況が深刻化する現況ではなかなかそれも思うに任せず、申し訳ない気持ちで一杯だと思います。そんな中、一部の新業態のIT企業が、労働対価としてはかなり不適切と思われるような桁外れの利益率で業績を伸ばし、贅沢三昧を繰り広げる様を、マスメディアが勝ち組の象徴のごとく囃し立てるのは如何なものかと思います。

資源の乏しい日本にあって、ものづくりは国家の要であり、この製造業が弱体化しては日本の将来に明るいヴィジョンは見えません。楽して大金をつかむ人を英雄のようにもてはやす風潮は考えものです。汗を流し、コツコツと真面目に仕事する人達の生活が今より少しでも向上するように、社会の収益構造を大胆に見直すべき時期かと思います。

当院では日、木、土を除く毎日、夕方6時半まで診療を受け付けており、この時間までに来院された患者さんに対しては、治療が完結するまで、きっちりケアすることを基本方針としていますが、中には受付終了間際に来院される方もいらっしゃいます。その多くは作業着のままで、体中から金属粉の臭いを発散させながら、あるいはカレー粉の香りを漂わせながら、そして汗が微妙に変質した独特な臭いを振り撒きながら来院される方など、実にさまざまです。いわゆる製造業に従事する方達ですが、決して高い賃金を得ているとは思えないし、昔でいう3Kの職場で働く方達も多いのではないかなと推測します。

私はこの方達を前にするといつも自然と頭が下がり、いつも以上に優しい気持ちで診察してしまいます。あなた方のおかげで我々の快適な生活が成り立っています、エアコンの効いた快適な環境の中で仕事をさせてもらっている自分達は何と幸せな事かと、感謝の気持ちが沸々とこみ上げてくるのを感じます。

10月18日(木)第89回目の院内クラシックコンサートを、わたなべ整形外科二階で開催しました。

このイベントは当院開業以来、春夏秋冬、一年に4回行っているチャリティーコンサートで、クラシック音楽というとなんとなく敷居が高くてと、とかく敬遠されがちな中、一流のプロの音楽家による本格的なクラシック演奏を、普段着で気軽に楽しんでいただこうという趣旨で開催しているものです。

基本は弦楽四重奏で、これにクラリネット、ホルン、ピアノ、ハープなどを加えた編成で行われることが多いのですが、時には群響の主席奏者達をお呼びしての木管五重奏、声楽家、チェンバロ、ピアソラ、ハーモニカ、スイスホルンなどなど、様々な趣向を凝らし、プロの演奏を楽しんでいます。また、私の大好きな、バッハの無伴奏チェロ組曲を無理にお願いして演奏して頂いたこともあります。

さて、第一線で活躍されているクラシックの演奏家達との交流を通じ、日本におけるクラシック演奏家達の置かれている厳しい状況が少しだけ見えて来ました。簡単に言ってしまうと、下品な言い方ですが「まあ、元は取れてないな」という事でしょうか。

一人の演奏家がプロとして独り立ちするまでには、音楽的な才能があるのは大前提で、遊びたい盛りの幼年期から時間的に拘束され、精神的、肉体的、金銭的な負担を、極めて長期間に亘って強いられるにも拘らず、プロとしてデビューした後のリターンは極めて少ないというのがシビアな現実のようです。

日本が先進国として世界から認めてもらう為には、文化的活動に対する国民の関心がもっと高まることが必要であり、個人として、企業として、また国家として、財政面まで含めてその活動をどの位までサポートする体制が出来ているかが問われているのではないかと思います。

もっともっと日常の市民生活の中にクラシック音楽が浸透し、低料金で頻繁にクラシックのコンサートが開催されるようになれば、演奏家たちを経済的にバックアップするだけでなく、その腕前がさらに上がることも期待できると思います。
 
メセナ活動を、景気の動向に左右されやすい、企業に任せっきりにせず、「金持ちの道楽」などと揶揄するのでもなく、一人一人のスタンスで文化活動を支援し、景気低迷の中大変だとは思いますが、こんな時だからこそ心にゆとりを持って美しい音楽に触れ、明日への活力を注入することも大切なのではと思います。

2012年07月22日

クラブハウス DaVA

わたなべ整形外科にはスタッフ専用の保養施設があります。

3年前の10月に完成したもので、足利で唯一のスカッシュコート、フリークライミングウォール、ビリヤード、ダーツ、フーズボール、内外2か所のホームシアター、バーカウンター、ラナイには常設のバーベキューグリル、暖炉を装備し、これまで様々な当院イベントに利用されております。 

DaVAとは、サンスクリット語で水を意味しており、バリ島のアヤナホテル(旧リッツ・カールトン)のレストランの名前から拝借しました。

この施設の建設に当たっては、賛否両論ありました。日本全体の景気が冷え込む中、何を考えているんだ?などと言う厳しい意見もありましたが、私の基本的な考え方は、「バリバリ働いて、みんなでしっかり楽しむ!」であり、他人に迷惑をかけず、福利厚生施設としてスタッフみんなが喜んで利用してくれるのであれば、これは実行すべきであると考えました。またこの施設を建設することで地方都市の景気回復に多少でも貢献できたのではと、ちょっぴり自負しております。

DaVAが完成してからは、スタッフを対象としたイベントやパーティーが一気に増え、また従来からあったイベントも、その内容がかなりレベルアップしたような気がします。 

私が「I am Happy !」と感じる瞬間は多々ありますが、イベントやパーティーを主催し、参加した人たちが心から楽しんでいる様子を拝見した時などは自分自身とってもハッピーな瞬間です。また医師という職業をたまたま選んだおかげで毎日たくさんの患者さんから心のこもった感謝の言葉や、オーバーワーク気味の私の体を気遣う優しい言葉を頂きますが、これまた心温まる瞬間です。私は何かさりげない親切をしてあげて、お礼を言われた時、英語人に対しては、「It’s my pleasure !」と即答することにしていますが、日本語にはなかなかこういう状況にピッタリくる言葉が見つからなくて困ります。

さて7月19日(木)午後、恒例となった真夏の大掃除、それに続くDaVAでのバーベキューパーティーがありました。今回は私の独断と偏見でパーティー参加者のドレスコードを、女性は浴衣、男性は甚平と決めてみました。結果、パーティーはいつも以上に盛り上がり、とてもいい企画だったと自画自賛しております。
   

平成10年1月、患者さん用の無料送迎サービスを始めた際、喜んでいただけると思っていた私の予想に反して、患者さんや医師会関係者から様々な苦言を頂戴しました。

「こんなに外来が繁盛しているのに、送迎バスを運行して、もっと儲けたいのか?」
「それでなくても診察の待ち時間が長いのに、こんなサービスを始められたら、待ち時間がさらに 増えてしまうんじゃないのか?」
「バスで来た患者さんだけ特別扱いしてるんじゃないのか?」

などなど、いろいろ叩かれましたが、患者さん用の無料送迎バスサービスは当院を開院する前からの私の悲願であり、批判される方達には一人一人誠意をもって説明し、現在もなんとかバスの送迎サービスは継続しております。

一人暮らしのお年寄りや車の運転ができない方、家族のサポートが期待できない方、タクシーで通院するのは経済的に厳しい方など、さまざまな社会的背景を抱え、痛くて辛くて通院したいけれど通院できない患者さんが現実に存在します。

現在わたなべ整形外科に通院されていらっしゃる患者さんの内、大体毎日の外来総数の5%前後の方が当院の送迎バスサービスを利用されておられます。今後利用者が減少したとしても、送迎を希望される患者さんがたった一人でもいる限り、このサービスは経営的には全くの不採算部門ですが、これからも断固続けようと私は考えており、利用されている患者さんから、心のこもった感謝のお言葉を頂くたびに、決意を新たにしております。

そもそも医療というのは基本的に人助け、困っている人を助け、その心の支えとなって希望を与え続けることを使命とするものであり、「奉仕の精神」がすべての医療活動のベースに流れているべきであると考えております。この強い信念さえぶれなければ、さまざまな心無い批判にも耐えられるし、胸を張って活動できるのではないかと考えております。 

さて当院では、祝祭日の午前中の診察や昼休みなしで利用可能なリハビリなど、バスの運行以外にも様々なサービスを実行していますが、これらはいずれも当院スタッフの協力なしにできるものではありません。スタッフ一人一人が「奉仕の精神」の意味を正しく理解し、医療機関で働くことに何らかのやりがいを見出してこそ実現できる事と思います。

また患者さんの描く理想の医療機関スタッフ像とは何か?

いつも優しく親切で、こぼれる自然な笑顔、清潔感あふれる身だしなみ、明るく爽やかに、そして病気に関する様々な相談に対し、親身になって専門的なアドバイスをしてくれる、などなど。

これら、医療機関スタッフに期待するものを我々がサラリと実行してはじめて、患者さんから感謝の言葉や、時には稀に、リスペクトの感情などが自然に生まれてくるものであり、我々は常にこの辺をわきまえた行動をとらねばと考えております。

開業して23年目も半ばを迎えようとしておりますが、当院外来には開院以来通院されている患者さんもたくさんいらっしゃいます。

「あんた、私より先に逝っちゃだめだよ!」
「死ぬまで頼むね!」
「あんたの顔を見ると痛みが吹っ飛ぶよ!」

毎日さまざまなストレートな言葉をいただきますが、さすがに外来で長い期間接していると、どの患者さんも他人のような気がしなくなって来ています。

また、幼稚園児の頃来院した患者さんが、今度は自分の子供を連れて来るケースも増えて来ました。夫婦で来院などは当たり前、親子三代に亘っていらしている患者さんもよくお見受けします。

個々の患者さんの、病歴は言うに及ばず、問わず語りの中で家庭の事情までもいつの間にか知る所となり、最近の自分は既に、いわゆるホームドクターの領域に足を踏み入れているなと感じております。

こんな中、待合室で待っている間に、リハビリ中に、あるいは診察中に、体のさまざまな機能の衰えから急変する方も出て来ております。

私の基本的な考え方として、当院に治療を目的として来院された患者さんに対しては、整形外科領域という狭視野なとらえ方ではなく、社会的背景を持った1人の人間として敬意を表し、その健康状態全般に対して関心を持ち、健康をトータルにサポートしたいと考えております。

来院された患者さんの血圧を測定する事はその第一歩、簡単な検査ですがその日の体調を知る上でとても貴重な情報が得られ、リハビリ治療やブロック注射に伴うリスクを最小限に減らすことが出来ます。

患者さんの中には内科の先生に気兼ねして血圧測定を拒否される方もいらっしゃいますが、これは患者さんに私の真意が伝わらず、心から信頼されていない結果ではないかと深く反省しております。

また、お薬を処方している方に対して、大体3ヶ月に一回位、血液検査をお願いしておりますが、これはお薬の効き具合や、副作用が出ていないかなどのチェックをする為に最低限必要なものであり、ご自身の為でもありますので是非協力していただきたいと思います。

1人の町医者として足利市における自分の立ち位置を考えた時、それはホームドクターとして、

来院された一人一人の患者さんの話にしっかりと耳を傾け、説得力を持って希望を与え続け、かみ砕いた、素人の人にも分かりやすい言葉で、簡潔に病状の説明ができる事

  であり、これからもこの方針で地道に努力して行こうと考えております。

2012年01月29日

スマイル

平成元年、わたなべ整形外科を開院するにあたり、私たちは「笑顔」「親切」「信頼」というモットーを掲げました。患者さんを思いっきりの「笑顔」でお迎えし、スタッフみんなで「親切」な対応をして病気が一日も早く治るようお手伝いすることで、患者さんとスタッフとの間に確固たる「信頼」関係が構築されることを願って皆で考えたものです。

以来23年目を迎え、最近よく感じるのは、この病院は患者さんもスタッフも、いつもいたる所で笑顔と笑い声のあふれる、いい雰囲気の中で動いているなあということです。「患者様」などと、待合室からお呼びする時だけ持ち上げるのではなく、「患者さん」と呼んで同じ目線で対応する中で、本音トークも自然に生まれ、「ここの病院に来ると何故かほっとする」「何でも気軽に相談に乗ってくれるので助かる」「ここに来るのがとっても楽しみ」「他の病院じゃあ緊張して話せないけど、ここなら何でも話せる」「スタッフがみんな優しいので、ついつい甘えて、悪いとは思うんだけどわがままが出ちゃう」などの声が院内いたる所で聞かれます。ともすればつらい病気を抱え、暗く、言葉少なになりがちな患者さんも、我々の病院に来た時だけは明るい笑顔がこぼれ、たくさん話をして、それまで抱えていたストレスを大いに発散して欲しいと願い、組織を運営していますが、今のところうまくいっているのではと感じています。

また私はいつも、まだ若く純粋な頃「医療機関で、困っている患者さんの為に働きたい!」と考えた時の、あの尊い気持ちを、スタッフ全員がいつまでも持ち続けられるような職場環境を提供することを心掛けています。理想論的な掛け声ばかりで、待遇が劣悪、いつも経費を切り詰める話ばかりでは、スタッフから自然にこぼれる笑顔は出て来ません。また患者さんに提供する医療レベルを高く維持し、快適な環境で治療が受けられるように、ハード面の充実も達成することで、スタッフ全員が自分の職場にプライドを持ち、やりがいを感じ、自然なスマイルが出て来るようになれば、当院を訪れた患者さんからも思わず笑顔がこぼれるものと信じています。

今後とも医師であると同時に、50人のスタッフとその家族、そして当院を選び通院していただいている患者さんの為に、戦略的な発想を持ってこの組織を運営し、我々の組織に関わる全ての人達からあふれるスマイルを引き出せたらと考えています。

2011年11月30日

待合室の患者さん

待合室で診察を待っている、あるいはリハビリ室で自分の治療の順番を待っている患者さんたちが、どんな心理状態にあるのか、私はいつもイロイロ考えます。

① あとどの位待てば自分の番になるのか?
② 呼ぶ順番を間違えてはいないだろうか?
③ まさか自分は忘れられてないよね?
④ どんな診断が下されるのだろうか?(初診の患者さんの場合)「まさか悪い病気じゃあないよね・・・」

こういった不安を抱えながら待っていらっしゃる患者さんに対して、我々はどう対応したらよいか、私はしばしば職員たちと話し合い、さまざまな対策を考えております。       

しかしながら、さまざまな努力をしているにも拘らず、いまだに患者さんからクレームが出たり、投書をいただいたりすることがあります。こんな時いつも我々が心掛けていることは、まずクレームや投書をいただいた方に対して、嫌な思いをさせてしまって本当に申し訳ないという、心からお詫びする気持ちと、勇気を奮って行動に出ていただき、我々の問題点を教えていただいたことに対する感謝の気持ちを持つということです。

中からばかり見ていては気付かない、患者さん目線からの指摘をきっかけに、我々の組織が一段とレベルアップしたことはこれまでにも度々あります。

クレームの中で一番多いのは、患者さんをお呼びする順番に関するものです。知り合いだから早く呼んでもらったんじゃあないかとか、社会的に地位のある人だから特別扱いしてるんじゃあないか、などの不信感が渦巻いてくると、待合室の雰囲気はかなりとげとげしいものになって来ます。

当院では幸い、我々が弱味を握られているような患者さんはいらしておりませんので、すべて受け付け順でお呼びしておりますが、今後とも誤解が生じないように、患者さんとのコミュニケイションを密にし、快適に待ち時間を過ごしていただけるよう、さまざまなアイディアを実行して行きたいと考えております。
 
私は時々いろいろな会社の社長さんや、とても忙しく、社会の第一線で活躍していらっしゃる方達とお話をする機会がありますが、こんな時いつもお伝えするのは、当院では患者さんとして来院された場合、すべて平等に、来院された順番でお呼びしており、特別扱いはできませんという事です。私はこれをとても重要なルールだと考えています。待っている他の患者さんの為でもあるし、フェアな対応をしているということで、病院に対する患者さんの信頼が高まり、その評価へと繋がって行くものと確信しております。

例えばの話ですが、マスコミにたびたび取り上げられるような有名人で、社会的な地位も高い人間が、どこかの病院を受診する際、診療申込書の職業欄に「会社役員」などと記入せず、一般の人に紛れて待合室の椅子に座り、たまたま自分を認識した人たちと雑談しながら、平然と自分の診察の順番を待っていたとしたら、自分的にはかなりカッコいい振る舞いだと思うし、この人に対する世間の評価も高まるのではないかと考えます。

兎にも角にも、こんなに混んでるんだから待つのは当たり前だ、患者さんも分かってくれるだろうなどと思い上がった考えを持たず、如何に順番を間違えず、職員一人一人がテキパキと行動し待ち時間を減らすように努めるか、そして今年のテーマでもある「わたなべ整形外科は、なぜか、待ち時間が楽しい・・・」を実現するアイディアを今後も次々に投入して行きたいと考えています。