製薬メーカーの営業戦略の不思議
2012年4月から日本で活動しているすべての製薬メーカーの営業方針が劇的に変わりました。
大雑把に言うと医療機関に対する接待を限りなくゼロに近づけるという内容です。どこのメーカーが言い出したルール改正なのか、諸説あってはっきりしませんが、何れにせよ現在では各社横並びで、医療機関に対するさまざまなサービスは、ほぼ消滅している状況です。さらに2019年4月からはカレンダーの提供も廃止となり、これでほぼ完成形かと私は感じています。(メーカー接待については小生院長ブログ2011.11.26もご覧下さい。)
こんな中MR(medical representatives)簡単に言うと、製薬メーカーの営業マン達の存在意義が急速に薄れて来ました。会社の方針で医療機関に対するありとあらゆるサービスが出来なくなりましたと言いながら申し訳なさそうに医療機関を訪れるMRに対し、激務の中、貴重な時間を割いてまで彼らに面会する暇な医師はいません。貴重な情報でも届けてくれるのであれば話は別ですが、ただ単に当社の薬を使ってくださいとお願いされても、こちらは当惑するばかりです。この
ような状況の中、MRさんとの面会を制限する医療機関が増えて来たのは自然な流れかと思います。製薬メーカー各社は接待禁止によって莫大な金額の内部留保が確保され、その金額は年々増え続けておりますが、社員への還元は殆ど考えていないようです。資本主義社会の中では、どういう手段を使って会社のイメージをアップし利益を上げるか、他社との違いをアピールし、選ばれ続ける企業を目指すか、とても重要なテーマです。巨大な海外製薬メーカーが次々日本のマーケ
ットに参入する中、日本の製薬メーカー各社は談合し、サバイバル経営戦略会議を通じて医療機関への営業を完全に廃止する決定をしたようです。生き残りの為のターゲットは厚労省。常にこの組織の役人達の顔色を伺い、良好な関係を構築することで会社を存続させるという決定はある意味正しいかと思われます。端的な例は、最近異常に高額な新薬が次々に厚労省によって薬価承認されていること、改良医薬品に高い薬価が与えられていることなどに現れていると思います。
また製薬メーカー各社が増やし続ける莫大な内部留保にはさまざまな使い道が考えられます。薬価が下げられた際の損失補填や、天下りの受け入れ、OTC(薬局で買う薬)販売の為の宣伝広告費、etc。
自由主義経済の下、製薬メーカーが医療機関に対する一切の接待を廃止し、カレンダーすら提供せず、他社製品との違いの説明も許されず、ただ営業に行って成果を出して来い、というのはある意味MRいじめのような印象を私は持っています。まるで何も武器を持たせず戦場に送り出し、素手で戦車や機関銃と戦って勝利して来いと言っているに等しいと感じます。もしかしたら会社側は、もうMR は不要であると高次の経営判断を下しており、徐々に合法的にMRゼロを目指し
ているのではと勘ぐってしまいます。医師との信頼関係構築を放棄し、厚労省にすり寄ることで生き残りを図ろうとする製薬メーカー各社に対し、私は素朴な疑問を感じております。