院長渡辺邦夫ブログ

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2020年06月28日

My Life (わが人生)

人間とは、この世に生を受けた直後から死を運命づけられ、そのゴールに向かって全速力で走り続ける生命体であるという現実感が最近たびたび私の脳裏をよぎります。大学2年の夏、バックパッカーとしてヨーロッパを3ヶ月ほど旅していた時、ちょっと不思議な体験をしました。それは昨日の自分と今日の自分が変化していることを実感するというものでした。これが、何と旅行中ずっと続きました。刺激の少ない地方都市に育ち、典型的な体育会系人間として中高6年間を過ごした田舎者が、シャイでコミュニケイション能力の極めて劣る状態でのヨーロッパ一人旅でした。旅行中、別ルートで欧州入りした同じ大学の同級生と時々行動を共にしたり、また離れたりしながら、基本一人旅の状況でした。何しろ毎日を生き抜くことに必死で、周りはオールイングリッシュの中、ひたすらアイコンタクトを取り、英語で考え英語で交渉し、昼間は現地で仲良くなった外国人旅行者たちと一緒に観光し、夜は夕食後毎晩のように、若者ばかりの安宿で繰り広げられる多彩な国籍の若者達とのディベートに参加し、何故か勝手に日本を背負って発言するという3ヶ月でした。おかげで帰国後は全く別人格のように変貌し、人前でも自分の考えをしっかり開陳出来るようになれた気がします。旅行を通じて得たものは数え切れない程たくさんありますが、その中でも特に人種の壁を超えることが出来るようになれたこと、そして「人は必ず死ぬ」だから、せっかくこの世に生を受けたんだから、「瞬間瞬間が人生」というような悔いの残らない時間の使い方をしようと考えるようになったこと、この二つが旅行の一番の収穫だったかと思います。世界幸福度ランキングトップ3の常連国であるデンマークでは、市民たちは朝目覚めると先ず「自分は必ず死ぬ」ということを自分自身で再確認し、10分間の瞑想後全身のヨガ的なストレッチをしてから一日をスタートすると聞いたことがあります。死という現実をポジティブに受け入れ、人生を前向きに楽しく生きる、そして決して働き過ぎないこと。古代ローマの哲学者セネカの記した名著「人生の短さについて」や、アップルのスティーブ・ジョブズが死を目前にして病床で語った「最後の言葉」などなど、多くの先人、賢人達が我々に伝えようとしたのは人生の儚(はかな)さではなく、自分が奇跡的な偶然でこの世に生を受けたことに感謝し、生かされている喜びを味わいながら日々過ごすことの尊さかと思います。最近、時々立ち止まって過去を振り返り、自分を見つめ直すことが増えました。やはり何より大切なのは自分が健康であること、そして家族、スタッフに笑顔があふれているか。さらには医療という仕事を通じて地域社会にどの程度社会貢献出来ているか。常にこれらを冷静に見つめ自省しながら、謙虚に我が人生を歩んで行こうと考えています。