わたなべ整形外科関連

最近ジェネリック医薬品が次々に姿を消し、外来が混乱しています。先日も当院の主力処方薬である筋弛緩剤(肩こり、腰痛などに処方)が入手困難となり処方が一時ストップし、患者さんには多大なご迷惑をおかけしてしまいました。

その原因はその生産に携わるメーカーが生産現場から撤退している為です。現状は生産中止の知らせが入るたびに事務長が薬問屋さんと相談して新たなメーカーを探している状況です。

これと関連する話として1997年8月、田辺製薬がラボナール(チオペンタール)の生産中止を発表した当時のことが鮮明に思い出されます。この薬剤はとても使い易く効果も確実で価格も安いということで日本中のほとんどの病院が日常的に全身麻酔の導入剤として使用していましたが、突然の生産中止の発表に麻酔科医達は一時大混乱に陥りました。生産中止の理由は極めて明快であり、厚労省の指示で薬剤価格が不当に安くされた為、生産すればする程赤字になるからということでした。

これ以外に代替可能な薬剤が無かったこともあり、全身麻酔を伴う手術が出来なくなって一時社会問題にまで発展しました。この時は日本麻酔科学会が中心となり厚労省に強く抗議して薬価を上げさせ、田辺製薬側も納得して生産が再開されました。さて厚労省は医療費削減を至上命題に掲げ、値段の安いジェネリック医薬品を処方するようにと、さまざまな方法を用いて半ば強引に誘導しています。

2年毎に薬価改定と称して5%~10%程度クスリの値段を下げ続けていますが、新薬の価格が異常に高い反面ジェネリック医薬品の価格はかなり安く抑え込んでいます。患者さんからすればクスリの値段は安ければ安い程ありがたいという事になるのでしょうが、その結果採算割れするという理由でメーカーが生産現場から撤退してしまい、外来で治療上必要なクスリの入手が困難になるという事態が起こっているという事は是非皆さんに知って欲しいと思います。こんな中、先日もジェネリック医薬品メーカー2社の不祥事が発生しましたが、薬価を低く抑え込まれた中、何とかして利益を確保しようとして起こるべくして起こった事件として私は認識しています。

勉強不足のマスコミは日本の医療費が高いなどとトンチンカンなことばかり言っていますが、日本の医療費はアメリカと比較して異常に低く抑え込まれおり、 医師の診察その他の技術料はアメリカの2割程度です。さらに言うならニューヨークで盲腸の手術を受けると一泊の入院で約250万円、これに対して日本では1週間入院出来て約40万円です。このように海外に比べて格段に安い医療費で運営されている日本の医療を支えているのは自己犠牲と奉仕の精神を叩き込まれた医療従事者達であるということも時々思い出して欲しいと思います。

そして会計検査院の機能をもっと強化し、税金の無駄遣いを止めさせ、社会保障への予算配分が適切に成されることを切望します。 2021.8.19

様々な誤解があるようですので、当院の無料送迎バス導入に関する事実関係を記載したいと思います。そもそも来院患者さんの為に、無料の送迎バスを運行しようと発案したのは、平成元年10 月の、当院開業の 1 年位前だったと記憶しています。当時の私は新規開業に向け、期待と不安の入り混じる中、これまでの勤務医時代に蓄えた様々な知識や経験の整理、そして勤務医時代には成し得なかった新システムの導入に向けて、希望に燃える日々を送っていました。常に患者さんの視点から発想し、「こんな病院あったらいいな」をテーマとして掲げ、志を同じくする仲間達と定期的に会合を重ね、熱き思いをぶつけ合う中で、無料送迎バスの提案もありました。自分で通院する手段を持たず、家族のサポートもまま成らぬお年寄りに対し、救いの手を差し伸べるという発想はとても自然であり、困っている人を助けるという、医療の原点に立ち帰るものと感じました。また整形外科診療の特殊性を考えると、リハビリ治療も含め、最低でも週に 2 回程度の通院を要する事や、膝や腰その他、身体各部に疼痛を抱える患者さんに対して、無料の送迎バスを利用していただくという発想は、とても自然な流れの中から生れて来たものでした。 この一連の経過の中で、足利市医師会への入会申請の際、バスによる送迎サービスのプランをお伝えした所、それは他の会員の迷惑になるので、医師会として認めるわけにはいかないという見解をいただきました。まったくの新規開業であり、相談する相手が誰もいない孤立無援の身としては、不本意ながらこの指示に従い、送迎バスのプランは諦めて開業することにしました。しかしそれから数年後、島田町で新規開業された「みくりや整形外科」さんでは、なんと開業と同時に送迎バスサービスを始めたのです。これには私も釈然としないものを感じましたが、当院外来への影響も無い事から、とりあえず静観を決め込む事に致しました。ところがまもなく、当院通院中の患者さんから、送迎バスの話題が、診察の際に持ち出されるようになって来ました。最初は医師会の意向に背いてまで行動するのは如何なものかと、適当に言い訳をしてごまかしていたのですが、毎日毎日10数人規模で訴えられ、その後、送迎バスサービスを始めて欲しいとのラブコールにまで発展し、とても自分1人では抑えきれない状況となって来ました。そこで思い余って知り合いの医師会理事に電話をし、理事会で送迎バスの問題を議題として提出し、これに関する足利市医師会の公式見解を出してくれるようにお願いしました。もし OK なのであれば、当院としては直ちにその導入に向けて動き出すし、NO と言う事であれば、医師会として何らかのアクションを起こして欲しいとの旨お伝えしたわけです。その後の詳しい経緯は分りませんが、いずれにせよそれからまもなくして、足利市医師会長の名前で、市内のすべての医師会員に宛てた文書が配布されました。その内容は、「足利市内の生活路線バスが廃止され、通院に不便を感じていらっしゃる患者さんの為、無料の送迎バスを運行する事は悪い事ではない。但し競合する医療機関の前で、患者さんを乗降させることは慎むべきである。」といったようなものだったと記憶しています。文書入手後、医師会事務局に電話で問い合わせた所、やはり書面の通りであり、バスによる送迎は問題ないと言われました。これを受けて当院では直ちにプロジェクトチームを立ち上げ、平成 9 年 11 月の 1ヶ月間をかけ、来院しているすべての患者さんを対象に、アンケート調査を行いました。そして両毛タクシーさんの協力も得て、送迎を希望するすべての患者さんを網羅する形でバスの走行路線図を作成し、停車する場所、時間など何回も試験走行を繰り返しながら徐々に詰めて行きました。また地区別に、バスによる送迎を希望する患者さんの名簿を作成し、バスの送迎時刻に変更が生じた場合は、送迎の前日ないし早朝に、職員が一軒一軒電話連絡をするなど、極めて根気の要る作業の連続でした。このような状況の中、平成10年1月4日に何とかスタートを切った送迎サービスですが、やはり予想通り、外来の来院患者総数は送迎スタート前と殆んど変わらないというものでした。これまでタクシーや家族に頼っていた方が、送迎バスを利用して、お金の心配をする事も、家族に気兼ねする事もなく来院できるようになったものと解釈しています。現在当院 1 日外来総数の 5%前後の方が送迎バスを利用し来院されていますが、経営的には全くの不採算部門です。「これ以上儲けてどうする?」「こんなことやるから益々外来が混んで、私達の待ち時間が増えるから止めて欲しい」など様々なご意見がありますが、このサービスを続けている理由は唯一つ、患者さんから寄せられる、心のこもった数多くの感謝の言葉があるからです。以前、足利日赤前院長の小野康平先生から「医の奉仕」という著書をいただきましたが、社会的弱者の立場にある方に、多少でもご奉仕出来るのであれば医師としてこの上ない幸せと考えています。こんな中、平成 16 年 8 月の足医月報、第491 号において、「送迎バスサービスは患者集めを目的とした行為でもあり、不当な競争が惹起される恐れや医療コストを押し上げることとなり、法的に問題無いとはいえ控えるべきとの意見が多かった。」という理事会報告の記載がありました。私は送迎バスサービスを中止する事は、それが足利市医師会の強い要望ということであれば従うつもりでいます。しかし問題があります。それは、こういう類のサービスは、始めるのは簡単ですが、中止するのがとても難しく、送迎バスを当てにされている患者さんの理解が、はたして得られるかという事です。恐らくパニックに近い大混乱が生じ、最悪の場合、足利市議会やメディアで大きな社会問題として取り上げられる可能性があります。現在私が考えているソフトランディングの方法としては、足利市に依頼し輸送手段として、「メディカル・シャトルバス・サービス」のようなものを立ち上げてもらい、医師会としてもこの事業に多少のサポートを行い、またこのサービスを利用する医療機関は、その利用頻度に応じて相応の負担をするといった内容です。様々な議論のある所かと思いますが、当院としては医師会の意向を無視して勝手な行動をしているという認識は全くありません。むしろ朝令暮改の如き印象を受けかねない、今回のような問題提起に当惑しているというのが率直な印象です

           初回投稿日  2011.4.7  改訂版投稿日 2021.5.21

最近のコロナに関する一連のメディア報道を受けて、私が毎回違和感を覚えるのは医療機関に関する部分です。簡単に言うとマスコミ側の勉強不足が目立ちます。何故医療危機なのか、何故医療崩壊なのか?その根本原因にまで切り込んで情報収集し報道するジャーナリストが不在です。政治家やある程度インテリジェンスの高いオピニオンリーダーも含め、日本の医療に関する正しい知識が不足しております。COVID-19感染者が増加して医療現場が逼迫し、追い詰められ燃え尽きたナースや医師たちが次々にコロナ最前線から離脱して行く現実を一般市民たちはどう捉えているのでしょうか。恐らくはマスコミがこの状況の背景を正しく伝えていないため多くの誤解や偏見が生じていることと思いますが、これらの主な原因は日本の医療費が安すぎるという所にあると私は確信しております。簡単に言うと米国の病院では医師、ナースを含めたすべての分野で日本の約10倍の職員が働いています。これだけ大勢の職員を雇えるということはそれだけ病院の収入が多いということです。初診料、再診料、検査費用を含め、あらゆる技術料が日本の5倍前後高く設定されている米国では病院内での分業が徹底されており、ナースがシーツ交換や院内清掃、患者さんの運搬などをしておりません。ハウスキーパーや患者運搬係、ドクターエイド(医師の診察をサポートし電子カルテを打ち込むなどの業務をする秘書)などなど日本には無いさまざまな職種があり大勢のスタッフが働いていて、医師やナースは専門職にしか出来ない業務に専念することが出来ます。外来診療に関しても、日本の医師は毎日米国の8倍の数の患者さんを診察していますが、一回診察当たりの平均医療費は米国の1/10、給料は米国の半分です。ナースに関しても給料は米国の半分位と考えて間違いありません。こんな中、厚労省がここ10数年医療費削減のアクセルを踏み続けた結果、全国の大半の公立病院は赤字となり、それ以外の医療機関も経営的に疲弊し切っており、十分な人材を確保することが出来ず慢性的な人手不足となっております。これは正に「日本の医療を問い直す」の著者、鈴木 厚氏の語る、「医療関係者の献身的な自己犠牲の上に成り立つギリギリの綱渡り的経営状況」そのものと考えます。また平成8年頃から厚労省は全国の保健所の数を800から500前後にまで減らしており、その状況下、人手不足の現場でCOVID-19に対する万全の対応が困難であったのは当然と言わざるを得ません。広く国民から集めた税金をどう使うべきか、政治家や行政担当者の責任は極めて重く、ここは大いに猛省し世界標準の診療報酬制度に少しでも近づけるよう改善して欲しい所であります。  2020.12.17

日本中が1年で最も冷え込むこの時期、患者さんから投げかけられるお決まりの言葉があります。「外がとっても寒いので厚着をして来たら、院内が暑くて汗をかいちゃったよ。病院の職員さんは皆んな半袖で仕事が出来て幸せだね。」そんな時、外来診療の混み具合にもよりますが、院内の温度設定に関する持論を展開することがあります。

皆さんは、そもそも医療機関の院内温度とはどういう基準で設定されていると思いますか?それは職員が半袖で快適に、そして活発に活動出来るように設定されている訳ではありません。来院された患者さんが診察を受ける際、状況によってはかなり薄着になっていただく場合があります。我々が設定している室温はまさにこの時の患者さんに合わせているのです。病院に行って診察を受け、風邪を引いて帰って来たなんて、様になりませんよね。そんな訳で当院の室温は冬の寒い時期、一般家庭での設定温度より多少高めに調節されております。

私が学生時代を過ごした札幌では、厳しい冬の時期「暖かさは何よりのごちそうです。」と言って、自宅を訪問された方をもてなすと聞いております。冷え込みの厳しい冬場、厚着して来院された際は是非、ごちそうを振る舞われた位に考えて、簡単に一枚二枚脱いで体温調整が出来るような服装で来院されることをお願いしたいと思います。

こんな中、昔はデパートなどに行った時、冬はちょっと暑いし、夏は冷房が効き過ぎて寒い位ということがよくありました。しかし個人的にはこの状況はウェルカムで、高温多湿でとても不快な日、デパートに足を踏み入れ、涼しくて快適な思いをした記憶がありました。しかし最近の傾向として大半のショップでは夏場の温度設定がかなり高めで、入店した際ちょっとがっかりさせられることが多い様な気がします。そこには様々な理由があるのでしょうが私が直感的に感じるのは、お店で長い時間過ごさねばならないスタッフの健康管理を最優先にし、ついでに電気代も節約し、エコに貢献しているポーズも取れるとういう、まさに一石三鳥の戦略であり、そこには酷暑の中、汗をかきながらわざわざ来ていただいたお客様に対する配慮が欠落しているような気がしてなりません。

私はサービス業を展開しお客様が同席される状況での温度設定と、オフィスや工場でスタッフだけが長時間過ごす環境での温度設定は当然異なるものにすべきであり、常にその場の主役は誰なのかを考えて室温を決めるべきであると考えております。

以上、偉そうなことを書き連ねて参りましたが、真夏の炎天下、あるいは真冬の凍るような厳しい環境下で働いている方達が大勢いらっしゃることを我々は常に肝に銘じ、1年を通じてエアコンの効いた快適な環境で仕事が出来ることに感謝せねばならないと考えております。   

2015年08月15日

開業四半世紀

平成27年6月18日、当院主催の院内クラシックコンサート第100回公演が開催され、一応の幕引きとなりました。開業以来1年に4回、小生幼なじみ青山進君の発案で始まり、チャリティーの形で運営し、群響OBの弦楽四重奏を中心にピアノや管楽器なども随時参加するコンサートでしたが、いよいよその最終回を迎えるにあたり感慨ひとしおです。群馬交響楽団の現役の演奏家達にも、コンサートマスターをはじめ多数出演してコンサートを盛り上げていただきました。

質の高いクラシック音楽の生演奏を、気楽に普段着で楽しんでもらおうというコンセプトで、いわゆるメセナ活動の真似事をさせていただきましたが、100回のコンサートを運営する過程で我々は多くの事を学び、また多くの感動を、コンサートにお集まりいただいた皆さま方と共有できた事を心から感謝しております。

さて、平成元年10月の開業から25年が経過し、26年目に足を踏み入れた「わたなべ整形外科」ですが、この頃着実に重ねた年齢のおかげで、副院長も小生も大分老朽化が目立ち始めております。こんな我々をしっかりサポートし、ボロが出ないように優しく、時には厳しくケアしてくれているのはズラリ揃ったベテランナースと事務、リハビリの精鋭達です。開業以来の生え抜き、あるいは看護学生として18歳で就職して以来などという、ある意味家族よりも一緒に過ごした時間が長いのではというスタッフ達も健在であり、彼らに支えられながら、もう少しの間現役で頑張ってみようかと考えております。

思いっきりの笑顔で患者さんをお迎えし、親切・丁寧に最高水準の医療をさりげなく提供することでADL(日常生活動作)の改善からQOL(生活の質)の向上に繋げるという地道な営みを日々続けて来たつもりですが、最近ようやく、自分が当院を開業する前に描いていた、一つの理想とした形に近づいて来たような気がします。院内を見渡すとスタッフにも患者さんにも自然な笑顔があふれており、生き生きと楽しそうに働くスタッフと患者さんとの間にはしっかりとした信頼関係が生まれ、徐々にそれが確固たるものに育ちつつあることを感じております。

また当院では開業以来一貫して院内処方を採用しておりますが、このシステムは診療終了後、院内の会計窓口でお薬が手渡され、しかも全く同じ治療、全く同じ薬が処方されたとしても、院外処方を採用している医療機関を受診した時に比べ、常に3割前後、患者さんのご負担額が少ないという画期的なものです。その反面これを採用する医療機関に対してはかなり経営的に無理を強いるものですが、患者さんの受けるメリットは計り知れないものがあり、今後もちょっとやせ我慢してでも院内処方を堅持するつもりでおります。

「すべては患者さんの為に!」

2014年(平成26年)4月1日、消費税が5%から8%に引き上げられました。欧米先進国では当然の事として行われている、食料品をはじめとした生活必需品に対する軽減税率は実施されず、一家の大黒柱の給料は上がらず、家計のやりくりは以前にも増して困難になって来ました。

今回は、2011.5.15に私がまとめた「院内処方・院外処方とは」との関連で、皆さんにささやかな提言をしたいと思います。

現在足利市には医療機関が100軒超ありますが、この内80軒前後が院外処方を採用しています。また、市内には常勤の整形外科医がいる施設が8ヶ所ありますが、この内当院以外の7軒が院外処方です。こんな中私が頑固に院内処方を続ける理由は2つあります。

1つ目の理由は、移動が大変な患者さんに対する配慮です。診察が終了した後、外の薬局まで出かけて行くのは大変な事だと思います。特に天候の悪い日などは最悪です。2つ目は、患者さんの支払う治療費の額が3割も違う為です。全く同じ治療を受け、全く同じクスリをもらっても、院外処方を採用している医療機関を受診した患者さんの方が常に3割前後、支払い額は多くなります。

この理由は厚労省が院外処方を採用する医療機関を増やす目的で利益誘導を行ない、また調剤薬局での処方に関する技術料を異常に高く設定した(あるいは院内薬局の技術料を異常に安く設定した?)為です。簡単に言うと、院外処方は経営的上のメリットを考えると医療機関の味方、院内処方は患者さんの味方です。「クスリを院内でもらえるし、窓口での負担は3割も安いのです。」

さて、皆さん御存知ないと思いますが医療非課税という法律の下、現在医療機関は薬問屋から、例えば公定価格100円のクスリを108円の消費税込みで仕入れ、患者さんには消費税抜きの100円でお渡ししています。来年以降消費税が10%になると院内処方を採用している医療機関は、クスリを処方する毎に10%の損失になるわけです。

薬価差益の全国平均が5~6%という厳しい状況となり、経営的には全くナンセンスな院内処方を維持する事の困難さを今年4月以降身にしみて感じていますが、こんな中、院長としては何とかやせ我慢をして「すべては患者さんの為に!」という事で、もう少しの間いい恰好させてもらおうかなと考えています。

消費増税で家計のやりくりが大変な中、「わたなべ整形外科」に行けば、同じ治療を受けても3割前後窓口負担が少なくて済むという情報提供でした。

2014年04月29日

祝祭日診療の事

究極の医療サービスとは、365日年中無休、24時間対応の診療体制だと、私は考えています。

病気やケガは、曜日や時間に関係なく突然襲ってきます。こんな時いつでも対応してくれる医療機関があったらいいなと思います。しかし医療水準が低くてはちょっと困ります。無愛想な対応をされるのも嫌なものです。アメリカにはこの条件を満たす病院が数多く存在します。でもちょっと問題があります。それはこのサービスを受けるには、患者さんのコストが日本の10倍以上かかるということです。アメリカの医療費が高いのは余りにも有名ですが、それだけ高額の医療費が医療機関に注ぎ込まれるおかげで、病院スタッフの人数は日本の10倍以上、給料は2倍以上が実現し、最新鋭の設備と余裕を持った勤務体制が実現出来ています。
 
さて、365日年中無休体制での医療の展開は私の夢ですが、その実現にはかなり高いハードルを越えなければなりません。わたなべ整形外科では平成22年(2010年)9月から、年間を通じて祝祭日も、午前中のみではありますが通常通りの診療(診察・リハビリ・バス送迎サービス)が受けられるようになりました。常に患者さん目線で医療の現場を見つめ、「こんな病院あったらいいな」をテーマとして平成元年の開院以来、時代の流れに身を任せ、しなやかに組織の形を進化させながらこれまで歩んで来たつもりです。

「経営を最優先にしない医療」、「患者さんが主役の医療」を目指して行くと現在のような形に落ち着くのかなと今は思っています。

しかしながら、院長として自信を持って患者サイドに立って実行していると確信していても、それに対する患者さんの反応は様々です。先日も、ある患者さんから祝祭日診療に対して「これ以上儲けてどうするの?」と言われた時にはちょっと絶句しました。

今回のゴールデンウィーク中も祝祭日はすべて、午前中の通常診療が受けられますが、これを実現するためにはスタッフ全員が、当院の目指す医療への姿勢を理解し、祝祭日出勤への協力があってはじめて実現するものであり、ねぎらいや感謝の言葉ならぬ、きつい一撃に、様々な考えを持った患者さんが来院している事を今更ながらに痛感させられ、我々はもっともっと謙虚にならねばいかん、独りよがりにならず、そして高度な医療サービスを今まで以上にサラリと提供しようと心に誓いました。

2014年02月17日

50年ぶりの大雪

今年の足利市は2月8日、15日と、2週連続で、50年ぶりの大雪に見舞われた。

腰の具合が良くなった私は9日の日曜日、早起きして病院駐車場の雪かきをした。結構早起きして行ったつもりだったが、既にカイロプラクターの峰崎が活動を開始しており、彼に合流する事になった。とりあえずプラウドとボヌールのお客さんが駐車場から治療ユニットまでスムーズにアプローチできるだけのスペースは確保しなければということで、二人で久しぶりにいい汗を流すことになった。

つい夢中でやってしまったが、案の定、雪かきが終わるころから腰痛と右坐骨神経痛が再燃して来た。いつも患者さんに言っている事で、15分に一回位休憩を入れながら作業するなどという事は、診察時の指導としてはもっともらしく聞こえるが、作業というものは一旦始まると、休みなく進めてしまうもので現実には無理だと実感した。

さてその一週間後、14日夜から降り続いた豪雪は足利市内を埋め尽くした。

そんな中、15日(土)の早朝6時、7時に目覚ましを掛け熟睡中の私の携帯が鳴った。それは当院事務スタッフからのものだった。15日朝の病院鍵開け当番の子が、まだ新人で鍵開けに慣れておらず、心配で電話した所、雪が深くて病院に行けそうもないとの返事。それではこんな悪天候の中、わざわざ来院される患者さんに迷惑がかかってしまうとの一心で、居ても立っても居られなくなり、何とか頑張って病院まで駆け付けたが、鍵がなくて中に入れない。途方に暮れ、恐る恐る私の携帯に連絡を入れたと言う訳だった。

取るものも取りあえず、パジャマにウィンドブレーカーのまま車を飛ばし病院に到着すると、正面玄関前に当院スタッフが二人、さらに病院西側の日の当たらない側にある職員通用口に車を進めると、そこには寒さに震え立ち尽くす、私に電話を掛けてきた事務スタッフの姿があった。これにはさすがに、やられたという思いで打ちのめされ、こんなにまで病院の事、患者さんの事を思っているスタッフがいたことに痛く感動させられた。

いつも皆に言っている事だが、人は何か大きなトラブルに見舞われた時、非日常的な状況に遭遇した時、その人の本領が発揮され、真価が問われるものだと思う。悪天候の中、スタッフ各自さまざまな知恵を絞り何とか病院までたどり着き、結局いつも通りの診療を行うことが出来た。

私はこんな素晴らしいスタッフ達と一緒に仕事ができる事を誇りに思うし、またそんな環境で働ける自分は、本当に幸せ者だと、大雪のおかげで改めて再認識することが出来た。

2013年12月19日

外来診療あれこれ

当院では初めて来院された患者さんに、診療申込書への必要事項の記入をお願いしております。

ここから得られる情報は、個人情報として大切に保管されるのはもちろんですが、これから診察を受けていただく際の貴重な情報として活用させていただいております。
 
私は学生時代、医学部よりも他の学部の学生達、そして様々なアルバイトやサークル活動、「すすきの」での社会勉強を通じて、実に幅広い職種の方々と交流を深めて参りました。そのおかげもあってか、外来で初めてお会いする患者さんとも極めてスムーズに会話が進み、その方達の職業についても一般のドクターよりは、かなり深い理解を持って接することが出来ていると、少なからぬ自負を持っております。

こんな中、診療申込書の項目の中で私が特に注目するのは、職業を記入する欄です。会社員、自由業、会社役員、無職、などなど様々な記入がされており、私はこのひとつひとつを、年齢や性別を加味しながら、職業に貴賤なしの大前提の下、興味深く読み込みます。昔から「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」と申しますが、職業欄に会社員という記入しかせず、とても謙虚で腰が低く、それでいて会話の中に高いインテリジェンスを感じさせる方の診察時には、会社役員と書いて尊大に構えている方よりは、こちらサイドの緊張感のレベルが少し上がります。

こんな時いつも考える事ですが、自分がもし高名な実業家あるいは国会議員などの肩書を持っていたとしても、患者という立場でどこかの医療機関の診察を受ける際には、職業欄はあっさり記入し特別扱いを要求せず、周りの患者さんとの気さくな会話を楽しみながら、平然と自分の診察の順番が来るのを待ちたいと考えております。

こういう事のできる人を、私はカッコいいと思うし、周りの人もきっとその人に対する評価を高めるのではないかと考えています。しかしその一方で、分刻みのハードワークをこなしているような忙しい人が、会社をリタイアし悠々自適の生活をしている人と、「平等に」、混雑した待合室で診察の順番を待つことを社会は本当に望んでいるのか、疑問に感じる事もあります。アメリカのように完全予約制、1人当たりの診察時間は30分、しかし診察料は日本の10倍以上という選択肢があってもいいのではないかとも考えます。 

私は、世界に冠たる日本の医療、国民皆保険の良さは堅持しながらも、もう少し柔軟で現実的な医療制度の改革が進められ、TPPの批准によって懸念される、アメリカの保険会社を利するだけの混合診療解禁は、断固避けなければならないと考えています。

「来る者は拒まず、去る者は追わず」

私は平成元年の開業以来、この原則を忠実に守って当院のスタッフ達と接して来ました。これまでに多くの人を迎え入れ、また多くの人が巣立って行きました。こんな中、開業以来のスタッフも含め、とても長く一緒に働いている仲間達がいます。彼らに共通しているのは(これは私の勝手な推測ですが)私が掲げる、「医療に対する考え方」への共感かなと考えています。病を抱え来院される患者さんに接する際の心構えとして、開院以来掲げている「笑顔」「親切」「信頼」、そして「常に患者さんに希望を与え続ける医療姿勢」を貫く為、時には厳しくスタッフを指導する事もありますが、そんな時私の基本的な医療に対する考えを理解している人はポジティブに受け入れてもらえているようです。

診療中本当にまれにスタッフを叱ることがありますが、それは患者さんに迷惑をかける行為をした時です。また使ってはいけない言葉も多々あります。診察時、レントゲン所見や病状についての説明をしている時、よく患者さんから、この病気この症状がなかなか改善しないのは年のせいですよねと言われることがありますが、これに安易に相槌を打つと大変な事になります。「あそこの病院に行ったら、年のせいだからもう治らないと言われた。」と言い触らされることになります。また注射やギプスその他の治療が終了した時、今日はこれで「終わり」ですというのも当院ではご法度です。私は高齢者に対して「終わり」という言葉を使うのはTABOO(タブー)と考えており、必ず、今日はこれで終了です、あるいは、これで完了ですという言葉を使うようにスタッフを指導しています。その他、患者さんの前で使ってはいけない言葉は、「大丈夫ですか?」「間違えました。」「失敗しました。」「ダメでした。」などなど、たくさんありますが、基本的には、患者さんに不安感、不快感、不信感を与えるような言葉はすべて禁句とし、むしろ希望を与え、不安を解消し、信頼感、幸福感を与えるような言葉を選ぶことを目指しています。

さて頑固オヤジの復活を目指す私としては、ひとたび当院のスタッフとなったからには、お節介と言われ様がお構いなしに、ビシビシと様々な教育を行っております。言葉使い、長幼の序の徹底、高齢者、弱者へのいたわり、一般常識の習得、身だしなみに至るまで、これからの長い人生を、そして社会生活を送る上で、とても大切な、そして基本的な事を若い人達は学んでくれているのではないかと確信しております。
 
院長としては、わたなべ整形外科で最低でも3年位勤め上げることが出来れば、どこに出しても恥ずかしくない、バランスのとれた社会人に仕上がることを目指しています。