わたなべ整形外科関連

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2021年05月21日

無料送迎バスサービスについて

様々な誤解があるようですので、当院の無料送迎バス導入に関する事実関係を記載したいと思います。そもそも来院患者さんの為に、無料の送迎バスを運行しようと発案したのは、平成元年10 月の、当院開業の 1 年位前だったと記憶しています。当時の私は新規開業に向け、期待と不安の入り混じる中、これまでの勤務医時代に蓄えた様々な知識や経験の整理、そして勤務医時代には成し得なかった新システムの導入に向けて、希望に燃える日々を送っていました。常に患者さんの視点から発想し、「こんな病院あったらいいな」をテーマとして掲げ、志を同じくする仲間達と定期的に会合を重ね、熱き思いをぶつけ合う中で、無料送迎バスの提案もありました。自分で通院する手段を持たず、家族のサポートもまま成らぬお年寄りに対し、救いの手を差し伸べるという発想はとても自然であり、困っている人を助けるという、医療の原点に立ち帰るものと感じました。また整形外科診療の特殊性を考えると、リハビリ治療も含め、最低でも週に 2 回程度の通院を要する事や、膝や腰その他、身体各部に疼痛を抱える患者さんに対して、無料の送迎バスを利用していただくという発想は、とても自然な流れの中から生れて来たものでした。 この一連の経過の中で、足利市医師会への入会申請の際、バスによる送迎サービスのプランをお伝えした所、それは他の会員の迷惑になるので、医師会として認めるわけにはいかないという見解をいただきました。まったくの新規開業であり、相談する相手が誰もいない孤立無援の身としては、不本意ながらこの指示に従い、送迎バスのプランは諦めて開業することにしました。しかしそれから数年後、島田町で新規開業された「みくりや整形外科」さんでは、なんと開業と同時に送迎バスサービスを始めたのです。これには私も釈然としないものを感じましたが、当院外来への影響も無い事から、とりあえず静観を決め込む事に致しました。ところがまもなく、当院通院中の患者さんから、送迎バスの話題が、診察の際に持ち出されるようになって来ました。最初は医師会の意向に背いてまで行動するのは如何なものかと、適当に言い訳をしてごまかしていたのですが、毎日毎日10数人規模で訴えられ、その後、送迎バスサービスを始めて欲しいとのラブコールにまで発展し、とても自分1人では抑えきれない状況となって来ました。そこで思い余って知り合いの医師会理事に電話をし、理事会で送迎バスの問題を議題として提出し、これに関する足利市医師会の公式見解を出してくれるようにお願いしました。もし OK なのであれば、当院としては直ちにその導入に向けて動き出すし、NO と言う事であれば、医師会として何らかのアクションを起こして欲しいとの旨お伝えしたわけです。その後の詳しい経緯は分りませんが、いずれにせよそれからまもなくして、足利市医師会長の名前で、市内のすべての医師会員に宛てた文書が配布されました。その内容は、「足利市内の生活路線バスが廃止され、通院に不便を感じていらっしゃる患者さんの為、無料の送迎バスを運行する事は悪い事ではない。但し競合する医療機関の前で、患者さんを乗降させることは慎むべきである。」といったようなものだったと記憶しています。文書入手後、医師会事務局に電話で問い合わせた所、やはり書面の通りであり、バスによる送迎は問題ないと言われました。これを受けて当院では直ちにプロジェクトチームを立ち上げ、平成 9 年 11 月の 1ヶ月間をかけ、来院しているすべての患者さんを対象に、アンケート調査を行いました。そして両毛タクシーさんの協力も得て、送迎を希望するすべての患者さんを網羅する形でバスの走行路線図を作成し、停車する場所、時間など何回も試験走行を繰り返しながら徐々に詰めて行きました。また地区別に、バスによる送迎を希望する患者さんの名簿を作成し、バスの送迎時刻に変更が生じた場合は、送迎の前日ないし早朝に、職員が一軒一軒電話連絡をするなど、極めて根気の要る作業の連続でした。このような状況の中、平成10年1月4日に何とかスタートを切った送迎サービスですが、やはり予想通り、外来の来院患者総数は送迎スタート前と殆んど変わらないというものでした。これまでタクシーや家族に頼っていた方が、送迎バスを利用して、お金の心配をする事も、家族に気兼ねする事もなく来院できるようになったものと解釈しています。現在当院 1 日外来総数の 5%前後の方が送迎バスを利用し来院されていますが、経営的には全くの不採算部門です。「これ以上儲けてどうする?」「こんなことやるから益々外来が混んで、私達の待ち時間が増えるから止めて欲しい」など様々なご意見がありますが、このサービスを続けている理由は唯一つ、患者さんから寄せられる、心のこもった数多くの感謝の言葉があるからです。以前、足利日赤前院長の小野康平先生から「医の奉仕」という著書をいただきましたが、社会的弱者の立場にある方に、多少でもご奉仕出来るのであれば医師としてこの上ない幸せと考えています。こんな中、平成 16 年 8 月の足医月報、第491 号において、「送迎バスサービスは患者集めを目的とした行為でもあり、不当な競争が惹起される恐れや医療コストを押し上げることとなり、法的に問題無いとはいえ控えるべきとの意見が多かった。」という理事会報告の記載がありました。私は送迎バスサービスを中止する事は、それが足利市医師会の強い要望ということであれば従うつもりでいます。しかし問題があります。それは、こういう類のサービスは、始めるのは簡単ですが、中止するのがとても難しく、送迎バスを当てにされている患者さんの理解が、はたして得られるかという事です。恐らくパニックに近い大混乱が生じ、最悪の場合、足利市議会やメディアで大きな社会問題として取り上げられる可能性があります。現在私が考えているソフトランディングの方法としては、足利市に依頼し輸送手段として、「メディカル・シャトルバス・サービス」のようなものを立ち上げてもらい、医師会としてもこの事業に多少のサポートを行い、またこのサービスを利用する医療機関は、その利用頻度に応じて相応の負担をするといった内容です。様々な議論のある所かと思いますが、当院としては医師会の意向を無視して勝手な行動をしているという認識は全くありません。むしろ朝令暮改の如き印象を受けかねない、今回のような問題提起に当惑しているというのが率直な印象です

           初回投稿日  2011.4.7  改訂版投稿日 2021.5.21