院長渡辺邦夫ブログ

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2022年06月12日

お薬手帳のこと 

 お薬手帳の制度は1993年、ソリブジン薬害事件をきっかけとして導入されました。内閣府が行った調査によると、2020年10月の段階でお薬手帳を所持していると答えた人は71.1%でした。しかしながら当院外来に初診で来院される患者さんのほぼ9割以上の方はお薬手帳を持参されていないというのが現実です。これではお薬手帳を持つメリットをまったく活用出来ないことになります。そもそもこの制度が導入された目的は、現在通院されている他の医療機関からの投薬内容、投薬日などを確認し、これまでの薬歴も含めて情報収集することで、薬の重複投与を回避し、薬の飲み合わせの確認も行い、患者さんに対して最適な処方が為されることを目指すものでした。また外出の際、交通事故その他の不慮の事故に見舞われ救急搬送された時など、病院で対応した医師はお薬手帳をチェックするだけでその患者さんが現在罹患されている疾患に関する情報収集を瞬時に完結出来るというメリットもあります。但しこれはあくまでも、医師や薬剤師達がお薬手帳の利用価値を正しく理解し、積極的に記載内容のアップデートに日々努めるということが大前提です。そして出来ればお薬手帳を一冊にまとめ、異なった医療機関を受診しても必ず同じお薬手帳を提示して、各医療機関の処方内容をその一冊に集約してもらうことがおすすめです。さらにその先目指すべきは大前研一氏の提唱する国民データベースの導入であると考えます。この導入にあたっては、生体認証によるログインでセキュリティーを強化し、すべての個人情報が安全に一元管理され、国民から信頼されることが最重要であります。また高齢者でも簡単に使いこなせるスマホベースのシステムとすることで、今後お薬手帳はもちろん運転免許証、健康保険証その他個人認証に必要なカード類はすべて不要となります。我が国は先進国の中で最もデジタル化が遅れていることで有名ですが、2016年1月莫大な税金を投入して鳴り物入りで導入されたマイナンバーカードは住基ネットの古いシステムに接ぎ木したに過ぎない代物で極めて使い勝手が悪く、また2021年9月に設置されたデジタル庁もお粗末極まりない組織のようです。ここは世界で最も先進的なデジタル社会を実現したエストニアやデンマークなどのデジタル先進国に学び、世界的視野で有能なITエンジニアを招聘し、ゼロベースでシステムの再構築を依頼することが今後の税金の無駄遣いを防ぐことにも繋がるベストプランであると考えます。
現在の日本の状況は、先進諸国と比較して恥ずかしいレベルのデジタル後進国であります。そこに住む国民のせめてもの生活の知恵として、取り敢えず皆さんにお願いしたいのは、
「病院に行く時以外でも、外出する時はお薬手帳を忘れずに。」という事です。決してかさ張るものではありません。自分を守る大切な必須アイテムとしてカバンの中に忍ばせておいて欲しいと思います。                         2022.6.12