日本人として、国際人として

2015年08月11日

2020年東京オリンピック

東京オリンピックが、その準備の段階で大きく揺れています。

メインスタジアムとなるべき新国立競技場の建設問題に端を発し、最近ではロゴマークの盗作疑惑まで吹き出す始末。この先一体どうなってしまうのか心配です。これら一連の騒動を通じ、ちょっと気になるのは、相も変わらず責任の所在がうやむやにされているという事です。誰も責任を取らず、トカゲのしっぽ切りで事態の収拾を図ろうとする関係者たちの厚顔無恥な態度には吐き気すら覚えます。

新渡戸稲造が世界に発信した「武士道精神」は一体どこへ消えてしまったのか。オリンピック組織委員会の会長を務める森氏などの世代は、その幼少期の教育を通じ、慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠など多くの日本人の行動基準、そして日本の道徳の中核として機能して来た武士道精神を徹底的に叩き込まれており、「名誉」と「恥」の意識は今の若者達より数倍研ぎ澄まされているはずなのに、一連の騒動に際し彼の口から出て来るコメントは恐るべき責任転嫁の連発であり、卑怯で恥知らずと言われても何ら弁解の余地はないと思われます。

是が非でもオリンピックを日本に誘致したい余り、実現不可能な空手形を連発し、何の根拠もなしに福島原発の汚染水処理は完璧であると言い放つ安倍首相の自信に満ちたIOC総会でのスピーチにも、ただ呆れるばかりです。

また、ロゴマークの盗作疑惑についても、もし万が一その製作のプロセスに不正がなかったとしても、結果として出来上がった作品が酷似したものであるならば、やはり3年前からベルギーのリエージュ劇場で使用されているロゴに敬意を表し、潔く撤回すべきものと考えます。

さらにオリンピックの開催日が7月24日の開会式から8月9日の閉会式までとなった経緯にも大きな疑問が付きまといます。欧米のプロスポーツ日程を優先し、35℃を超える猛暑日が続く中、世界の超一流アスリートたちの健康被害あるいは参加辞退が相次ぐなどという状況を避ける意味でも、この時期の開催はかなり無謀であると考えます。

こんな中、岩手、宮城、福島の3県では、今なお8万人近くの方々が仮設住宅暮らしを強いられています。物事の優先順位から言って、福島原発の汚染水処理とその原発廃炉に向けた作業工程の迅速化、そして今なお避難されている多くの住民の方々に一日も早く平和な日常が訪れるように復興支援することが最優先事項であり、オリンピック施設建設の為、復興プロセスに遅れが出るなど断固許されない事と考えます。