混合診療解禁に関する誤解
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)との関連で考えてみると少し分かり易い。
このとてつもなく厄介な24項目の協定はその交渉過程がすべて非公開、しかもTPP発効後も4年間は公開されないという、かなり怪しげな協定であり、加盟を検討している国々の良識ある市民団体はこぞってこの協定に疑問を呈し、反対しているという代物です。
TPPとは単なる自由貿易協定ではなく、24項目の中には医療や保険に関するものも含まれており,このTPP交渉の中でアメリカが日本に対し強引に混合診療解禁を迫る背景に見え隠れするのは、アメリカの大手保険業界の動向です。
混合診療解禁となると厚労省はここぞとばかりに、これまで保険診療でカバーしていた治療まで次々に自由診療へと切り替え、社会保障費の削減に突き進む可能性があります。これに備えて国民は仕方なく民間の医療保険に加入するわけですが、ここにビジネスチャンスを見出そうと、国内外の保険会社が参入の機会を虎視眈々と狙っているという図式です。
ところで私は基本的に混合診療を全面解禁する必要はないと考えています。この件に関しては日本医師会もTPP交渉に関する公式見解として、「混合診療の全面解禁反対」の立場をとっており、珍しく意見が一致しております。
「保険の適用外の分だけ自費で負担し、適用分は従来の保険で賄う。」こんな簡単な、現行制度の不備な部分(同一日に自由診療、保険診療を受けるとすべての治療費が自費請求される。)の微修正で十分対応できるものであり、我が国が世界に誇る国民皆保険制度を守るためにも、TPP交渉担当者には、日本の国益を第一に考えた粘り強い、したたかな交渉を期待したいものです。
ともすれば混合診療全面解禁の長所ばかりが強調され、これに反対する日本医師会は、公的保険にしがみつき、競争の原理の導入を拒否し、先進的な医療への取り組みに消極的な利権団体であると批判されておりますが、この混合診療に限っては多少の誤解があるようです。
様々な社内タブーを作り自主検閲し、「記者クラブ」で得られる垂れ流し情報を思考停止したまま何の検証も加えず報道する、海外から三流との烙印を押される日本のマスコミのレベルの低さにはいつも辟易しておりますが、今回の混合診療解禁というテーマに関してもフェアな報道は成されていないという印象を受けました。
やはり真実の核心に迫るには、信頼できる人物をある程度絞り込み、その人達からの直接の情報収集や、彼らの出版する書物やネット上での情報提供を注意深く読み込むことかなと考えています。