平成24年度診療報酬改定について
来月4月は、診療報酬改定の時期です。診療報酬とは、公的医療保険制度(保険診療)における医療サービスの公定価格のことを言います。2年に一度改定されますが、平成14年には、国民皆保険制度が昭和36年に誕生して以来初めて、本体部分が引き下げられて診療報酬が大幅にダウンしました。
これは小泉内閣の「聖域なき構造改革」が医療に及んだもので、当院も一時は30%以上のダウンとなり、経常収支は開業以来の大赤字となったことを覚えています。その後も2年毎に引き下げられ、同じ治療をしていても技術料評価が引き下げられ、収入が減少するという悔しさを6年間連続して味わうことになりました。
その後、診療報酬は全体で微増という経過をたどっていますが、ここで是非皆さんに周知徹底していただきたいことがあります。それは何かというと、厚労省が発表する診療報酬の増減幅は診療科全体の平均値であるという事です。
つまり、すべての診療科が平均して、その収入が増減するわけではないという事であって、科によって収入が増える科もあれば、減る科もあるという事です。最近では産科医や小児科医不足解消のためにその技術料を増やしたり、勤務医の待遇改善のために病院の収入を増やし、診療所の収入を減らすという策も取られています。
要するにトータルの医療費は極力抑えながら、医療の現場から大きな不満が出ないようにチマチマと調整するということが2年に一度行われているわけです。
この流れの中でいつも割を食らうのは整形外科でした。日本医師会幹部(大半は内科医)の、「整形外科医は儲け過ぎだ」という思い込みと偏見の下、毎回のように整形外科をターゲットにした診療報酬の引き下げが行われています。
しかし正しく認識すべきは、「日本の医療費は高い!」と、不勉強なマスコミは書き立てますが、世界の先進国の中で国民一人当たりGDPに換算すると、日本の医療費は常に最低のランクであり、USAの約半分であるという事実です。
こんな中、更なる医療費の削減を現場に迫る結果、医療事故は増え、医療関係者の自己犠牲的就労も限界に達し、医療崩壊の足音が徐々に強まって来ているのを肌で感じます。
今回の改正も全体では0.004%のアップと言いますが、薬価ベースでは6%のダウンであり、これは当院のように患者さんのメリットを考え、院内処方で運営している医療機関にとっては大きな負担であり、減収につながります。
いずれにせよ今回の診療報酬の改定はマスコミの発表を鵜呑みにして喜んでいられるものではないという正しい情報認識を、1人でも多くの市民と共有したいと考えています。