医療問題

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2011年11月26日

接待について

平成24年4月から、製薬メーカーによるドクターへの接待が、今まで以上に厳しく制限されることになりました。

数年前にも似たようなルール変更があり、この時もかなり、接待に規制がかかりましたが、中でも学会発表用の文献検索や、スライド製作協力を全面禁止にするという通達は、かなり大きな衝撃が医療機関を襲いました。特に大学勤務の研修医たちは、その大半がいまだに無給、もしくは信じられないくらいの薄給で働いており、一週間の激務をこなし、週末になると生活費を稼ぐため、関連病院の当直や外来の代診としてアルバイトに出ます。またウィークデイは朝から晩まで働き、夜遅くなってから研究を開始しますが、何しろ生活は苦しく、こんな中、大変コストのかかる学会発表用の文献検索やスライド作成などを各製薬メーカーがサポートしてくれていました。これが全面禁止となり、生活費を削って学会発表を続けることの困難さを日本中の研修医達が味わいました。

幸い最近ではITの進歩により、学会発表がパワーポイントで済むようになり、スライドが不要となった為、事態は多少改善しております。

これら一連の接待規制は、公正取引委員会(以下、公取委と略す)からの行政指導によるものではなく、「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」(以下、公取協と略す)からの通達によるものです。つまり製薬メーカー各社が、自分たちで立ち上げた「公取協」を利用して、ドクターへの接待を規制し、経費削減に乗り出すという動きでした。

当初、大半のドクターたちが、まんまと騙されたのはその言葉使いでした。つまり、MRたちは、「公取からの通達で、もう接待その他の便宜供与が出来なくなりました。」と言っていたのですが、我々はてっきり「公取委」からの通達と勘違いして、それでは仕方がないと、素直に受け入れました。しかし後になって「公取協」からの通達に過ぎないことが判明し、全国のドクターたちの猛烈な反感を買うことになり、一部の病院ではすべてのMRの出入りが禁止になるという事態にまで発展しました。

接待という形は、大なり小なりどこの業界でも行われている商習慣であり、これがすべて廃止の方向に動いて行くとしたら、MRさん達の存在意義にも絡む重大な変更であり、見過ごすわけにはいきません。

私が開業する少し前までは、1000万円分の薬を購入すると、1000万円分の同じ薬がおまけで付いて来たり、開業祝に車を一台贈呈されたり、まあ数え上げればキリがない程の豪勢な接待攻勢が普通に行われていたと、先輩達から聞いておりますが、私自身は残念ながらこのようなおいしい体験はしておりません。

私は、あまり極端なケースは別として、ある程度の潤滑剤としての接待は、それなりに存在意義があると思いますが、個人的には開業以来、接待で、メーカーにおねだりして美味しいものを食べに行ったり、ゴルフをしたりという事は、極力避けるようにしています。これには、各メーカーと、できるだけ対等の立場で、フェアな関係を保ち、患者さんに処方する薬の選択に影響が出るのを避ける意味もあります。

美味しいものは自分でお金を出して食べたいといつも思っていますが、こういうドクターはMRさん達から見ると、少し厄介な存在かも知れません。彼らからすると、ドクター接待の名目で、自分の給料では決して行けないような高級料亭やレストラン、クラブ、ゴルフ場などに頻繁に出入りし、美味しいセレブな暮らしが実現するのです。

来年4月からの接待規制強化に向け、各メーカーではドクターへの最後の接待攻勢をかけており、高額なコストのかかるお店はどこも予約が急増していると、聞いております。私はこんな時期は避け、4月以降の、少し騒ぎが落ち着いた頃に、MRさん達にアドバイスをいただき、評判の高いお店を訪れてみようかと考えております。

もちろん自腹で。