院長渡辺邦夫ブログ

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2023年01月25日

クスリの欠品について

2年程前からクスリの欠品が目立つようになりました。この為我々は、診察あるいは会計の際、「処方薬が変更になりましたが効き目は一緒です。」という説明を毎日何回も何回もする羽目になっています。皆さんは何故こんなことになってしまったのかご存知ですか?このキッカケとなったのは福井県の小林化工(245人の健康被害を起こし2人が死亡)や富山県の日医工といった後発医薬品(ジェネリック)メーカーによる不祥事でした。この不祥事が明らかになったあと業界団体が呼びかけた自主点検の結果3000品目以上の医薬品に製造工程での問題が見つかり、クスリの供給停止や出荷調整が発生しました。つまり市場から大量のジェネリック医薬品が姿を消したという訳です。そのあおりを受け、良質のジェネリック医薬品、さらには先発医薬品にまで需給ひっ迫が連鎖し、問屋にクスリを注文してもいつ入荷するか分からないという状況になってしまっているという次第です。クスリが足りないのであれば各メーカーともこれをチャンスととらえ増産体制に入ればよい訳ですがその動きはまったく見られません。その理由は厚労省の薬事政策にあると考えられます。これまでは2年に一度薬価の見直し(薬価の引き下げ)が行われておりましたが2021年からはこれが毎年の見直しとなり、薬価が毎年下げられてしまう為、わざわざ設備投資して生産ラインを拡充してもわずかな利益しか期待出来ないし、クスリの種類によっては作れば作る程赤字が膨らむという構図になっております。この為、生産現場から撤退し廃業するジェネリックメーカーも出て来ているというのが厳しい現状です。

さて、これら一連の問題の根本的な原因は何かと考えると、厚労省が財務省からの医療費削減圧力に唯々諾々と従い国民の生命・健康を維持する為の支出を削り続けているという点であると私は考えます。常軌を逸した薬価引き下げの結果、メーカー側は少しでも利益を確保するため製造工程における品質管理をなおざりにしたのではという推測も成り立ちます。更に言わせてもらえば、採算割れするほど薬価を引き下げるのであれば、これと同時進行で、ジェネリックメーカーの製造工程で発生が想定される不祥事に対しての監視を強化し、厳しく指導すべきであったのにこれを怠たり2人の犠牲者を出した厚労省の罪は極めて大きいと考えます。

                              2023.1.25