政治家の世襲について
2022年10月4日、岸田首相の31歳の長男が政務担当の首相秘書官に抜擢されました。将来の世襲を見越した人事と見られますが、官邸側は「適材適所で総合的に判断した」と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返しています。選挙で選ばれたわけでもなく、難関な試験に合格したわけでもない若者が、ただ総理の息子というだけで選ばれるのは、正に官邸を私物化するようなものであると私は考えます。
そもそも日本では国会議員全体の3割が世襲、自民党に限れば4割が世襲です。これに対して世界の先進国を見ると世襲議員の割合は1割以下と言われており、日本は世界でも稀にみる世襲議員の多い国と言えます。平成元年(1989年)~令和4(2022年)の33年間を振り返ると実に20人の首相が誕生しましたが世襲でない首相はたったの6人でした(宇野宗祐、海部俊樹、村山富市、菅直人、野田佳彦、菅義偉)。つまり総理大臣の世襲率70%という異常さです。この背景にあるのは先進国に比べて選挙の投票率がとても低いことかと思います。投票率が低ければ低いほど既得権益を握った人達に推された候補者が当選しやすくなり、既得権は温存されます。
また政治を家業と考える政治家たちは、何としてでもこの美味しい家業を子孫に残したいとの一念で動き、後援会組織と一丸となって世襲議員の誕生に奔走します。この結果、前途有為の新人候補は当選しにくくなり、国会は老獪な利権政治家の巣窟と化し国家運営は行き詰まり、現在まで30年間続く国家の危機的な状況を生み出していると考えます。さて国家、国民の為に奉仕するという強い意志を持ち、私利私欲に走らず、誠実で高潔、そして強い正義感を持った政治家が選ばれる為には、先ず選挙の投票率を欧米先進国並みにアップすることが喫緊の課題と考えます。政権与党にとって一番都合がいいのは、選挙なんか行っても世の中何も変わらないさ、まともな候補者が見当たらないなどと、政治に対する興味を失わせ、国民が投票に行かないという行動を取ってくれることです。シンガポール、オーストラリア等々厳格な罰則を設けて義務投票制を採用している国もありますが、我々国民は無能な政治家に国のかじ取りを委ねることで起こる現代日本の悲劇的な状況を厳しく正視し、もっと積極的に政治と向き合い、自主的な投票率アップに取り組みたいものです。
最後に一言「子孫に美田を残さず」老子
政治の世界では特に傾聴に値する言葉かと思います。 2022.10.14