外来診療あれこれ
当院では初めて来院された患者さんに、診療申込書への必要事項の記入をお願いしております。
ここから得られる情報は、個人情報として大切に保管されるのはもちろんですが、これから診察を受けていただく際の貴重な情報として活用させていただいております。
私は学生時代、医学部よりも他の学部の学生達、そして様々なアルバイトやサークル活動、「すすきの」での社会勉強を通じて、実に幅広い職種の方々と交流を深めて参りました。そのおかげもあってか、外来で初めてお会いする患者さんとも極めてスムーズに会話が進み、その方達の職業についても一般のドクターよりは、かなり深い理解を持って接することが出来ていると、少なからぬ自負を持っております。
こんな中、診療申込書の項目の中で私が特に注目するのは、職業を記入する欄です。会社員、自由業、会社役員、無職、などなど様々な記入がされており、私はこのひとつひとつを、年齢や性別を加味しながら、職業に貴賤なしの大前提の下、興味深く読み込みます。昔から「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」と申しますが、職業欄に会社員という記入しかせず、とても謙虚で腰が低く、それでいて会話の中に高いインテリジェンスを感じさせる方の診察時には、会社役員と書いて尊大に構えている方よりは、こちらサイドの緊張感のレベルが少し上がります。
こんな時いつも考える事ですが、自分がもし高名な実業家あるいは国会議員などの肩書を持っていたとしても、患者という立場でどこかの医療機関の診察を受ける際には、職業欄はあっさり記入し特別扱いを要求せず、周りの患者さんとの気さくな会話を楽しみながら、平然と自分の診察の順番が来るのを待ちたいと考えております。
こういう事のできる人を、私はカッコいいと思うし、周りの人もきっとその人に対する評価を高めるのではないかと考えています。しかしその一方で、分刻みのハードワークをこなしているような忙しい人が、会社をリタイアし悠々自適の生活をしている人と、「平等に」、混雑した待合室で診察の順番を待つことを社会は本当に望んでいるのか、疑問に感じる事もあります。アメリカのように完全予約制、1人当たりの診察時間は30分、しかし診察料は日本の10倍以上という選択肢があってもいいのではないかとも考えます。
私は、世界に冠たる日本の医療、国民皆保険の良さは堅持しながらも、もう少し柔軟で現実的な医療制度の改革が進められ、TPPの批准によって懸念される、アメリカの保険会社を利するだけの混合診療解禁は、断固避けなければならないと考えています。