IT企業の豪華な社員食堂
ここ2~3年、雑誌やテレビなどのマスメディアを通じて、IT企業の豪華な社員食堂をテーマとした記事やドキュメンタリー番組を流す機会が増えています。これはマスメディアと企業と、相互の利害が一致した為に実現したものと思われますが、個人的にはちょっと違和感を覚えています。企業側からすると質の高いスタッフを獲得する為に、会社の福利厚生施設の充実ぶりをアピールするのが目的だと思いますが、見ているうちに段々不愉快になって来ることがあります。
その大小に関係なくどんな会社も、トップに立つ人間は、従業員の待遇を少しでも良くしたいと願っていると思いますが、不況が深刻化する現況ではなかなかそれも思うに任せず、申し訳ない気持ちで一杯だと思います。そんな中、一部の新業態のIT企業が、労働対価としてはかなり不適切と思われるような桁外れの利益率で業績を伸ばし、贅沢三昧を繰り広げる様を、マスメディアが勝ち組の象徴のごとく囃し立てるのは如何なものかと思います。
資源の乏しい日本にあって、ものづくりは国家の要であり、この製造業が弱体化しては日本の将来に明るいヴィジョンは見えません。楽して大金をつかむ人を英雄のようにもてはやす風潮は考えものです。汗を流し、コツコツと真面目に仕事する人達の生活が今より少しでも向上するように、社会の収益構造を大胆に見直すべき時期かと思います。
当院では日、木、土を除く毎日、夕方6時半まで診療を受け付けており、この時間までに来院された患者さんに対しては、治療が完結するまで、きっちりケアすることを基本方針としていますが、中には受付終了間際に来院される方もいらっしゃいます。その多くは作業着のままで、体中から金属粉の臭いを発散させながら、あるいはカレー粉の香りを漂わせながら、そして汗が微妙に変質した独特な臭いを振り撒きながら来院される方など、実にさまざまです。いわゆる製造業に従事する方達ですが、決して高い賃金を得ているとは思えないし、昔でいう3Kの職場で働く方達も多いのではないかなと推測します。
私はこの方達を前にするといつも自然と頭が下がり、いつも以上に優しい気持ちで診察してしまいます。あなた方のおかげで我々の快適な生活が成り立っています、エアコンの効いた快適な環境の中で仕事をさせてもらっている自分達は何と幸せな事かと、感謝の気持ちが沸々とこみ上げてくるのを感じます。