2021年06月28日
鎌倉から室町へ
皆さんこんにちは。副院長の福です。
緊急事態宣言が解除されて、気が緩んだわけではないでしょうが、新型コロナウイルス感染の勢いは衰えないようです。皆さんも基本を守って、ワクチン接種を早めに済ませましょう。
足利に住むようになってから、足利尊氏に始まる室町時代と足利将軍に興味を持つようになりました。戦前の皇国史観のためか、足利尊氏の人気はいま一つでしたが、太平記にあるように、鎌倉幕府の崩壊から南北朝の動乱の時代は、個性的な武将も多く、戦の展開にも面白いものがあります。
こんな中、後醍醐天皇、楠木正成、足利尊氏を主人公にした歴史小説がでました。日経小説大賞を受賞した天津佳之さんの『利生の人』です。「利生」とは仏教用語で、「衆生に仏の利益をもたらすこと」だそうです。
利生を成すために討幕の挙に出る後醍醐天皇、その挙に賛同し、兵をあげる楠木正成、そして、正成に呼応するように鎌倉方から寝返る足利尊氏。しかし、鎌倉幕府が滅亡しても、武家も公家も私利私欲から離れられず、利生には程遠い政治。苦悩する後醍醐天皇、そしてそれぞれ別の道を行く正成と尊氏。
正成に魅かれる尊氏。利生を貫けない後醍醐天皇を歯がゆく思いながら、自らの分を貫き通す正成。そして新たな将軍として武士たちに担がれる尊氏。正成の首に涙する尊氏。利生は何処へ。
三者三様の結末を迎えていきます。なかなか読み応えのある作品でした。
皆さんも、足利に関りのある作品を見つけたら、是非読んでみて、面白かったら教えてくださいね。それではまた。