お薬の値段
皆さんこんにちは。副院長の福です。
東京では新型コロナウイルス感染者が、毎日百人を超える勢いで発生しています。一体、今後はどうなるのでしょうか。皆さんも、感染予防には十分注意してください。
今回の話は、皆さんには直接には関係ないかもしれませんが、ちょっと気になったのでお話しします。
5月13日に「ゾルゲンスマ」というお薬が認可されました。この薬の薬価が、一治療当たり1億6707万7222円という過去最高額でした。薬価とは、薬の公定価格ですから、ゾルゲンスマを一回使うと1億6700万円ちょっとがかかるという事です。
一体何の薬かというと、脊髄性筋萎縮症という病気の薬です。脊髄性筋萎縮症は運動神経が変性、消失し、筋力低下と筋萎縮をきたす病気です。最も重症の乳児型は支えなしで座れず、ハイハイもできず、平均余命は2歳未満と言われています。
日本の脊髄性筋萎縮症の患者数は、人口10万人に1.2人、全体で1500人程度とされています。出生1万人に0.6人生まれるとされ、現在日本では毎年50人ほど生まれる計算です。
私が医者になったころは、脊髄性筋萎縮症との診断は「死の宣告」とまで言われていましたが、ゾルゲンスマの登場によりこの病気の治療が大幅に変わってきます。早期に発見し、早期に治療開始すれば神経細胞の変性も軽微で済み、より正常に運動機能が発達します。
しかもゾルゲンスマは、一回の投与で、効果は理論上は一生続くと考えられています。なぜこんなことが可能かというと、ゾルゲンスマは、脊髄性筋萎縮症では正常に機能していない遺伝子に代わって、正常な遺伝子を直接運動神経の細胞に組み込んでしまう画期的な遺伝子治療薬なのです。この病気を持つ患者さんとそのご両親にとっては、まさに夢の薬なのです。
しかし、夢の薬のお値段が1億6700万円とは!皆さんは高いと思いますか?安いと思いますか?
それではまた。