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2020年05月21日

コロナの影に垣間見える日本の医療のすきま風

 皆さんこんにちは。副院長の福です。

 新型コロナウイルス感染に対する緊急事態宣言が、東京周辺と北海道以外解除されるとのことです。「解除」という言葉のニュアンスから、コロナ対策が緩くなり、感染者が増加することにならないことを祈りましょう。皆さんも、もう一度コロナ対策を確認してくださいね。

 こんな中、ここ数か月はコロナのニュースばかりですね。「感染者が何人出た。」、「PCR検査ができない。」、「保健所に電話が繋がらない。」、「重症患者の入院ベッドが足りない。」、「救急車がたらい回しにされる。」、等々です。こんなニュースを聞きながら、何か違和感を感じていたのですが、その違和感が私の中で実態になり始めました。

 皆さんは足利の保健所は何処にあるかご存知でしょうか?大橋町ですか、いいえ、正解は「足利に保健所はない!」です。現在は真砂町にある「安足健康福祉センター」が保健所の役割を担っています。「安足」ですから、足利市と佐野市でここ一つです。つまり、保健所は、統廃合されつつある組織です。私の義理の母は、三重県で長く保健所長をしていました。既に現役は引退していますが、県南地域で食中毒が発生すると、「人がいない、大変だ。」と、良く言っていました。確かに食中毒や伝染病の届け出などは、保健所の業務ですが、これを統廃合して縮小してきたのは、厚生省(現、厚生労働省)です。この縮みゆく組織に、未知の新型コロナウイルス対策をすべて丸投げして、うまくいくとはとても思えません。実際、PCR検査は悲惨な結果でした。

 ベッドが足りないという声にも、違和感を強く感じました。足利では、足利赤十字病院が、移転、新築され医療体制は増強されたとお思いでしょうか?足利赤十字病院が移転した翌年、20床の病床が閉鎖させられたということをご存知でしょうか?下野新聞にも載ったので、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。これは、厚生労働省の「病床数はとにかく減らす。」という大方針の結果です。厚労省は病床こそが、医療費を増やす元凶と考えているようです。特に医療費のかかる急性期病床は目の敵にされてきました。このような状況下で、超急性期のICU病床や、重症患者用の病床を急に増やせ、といわれても無理な相談です。

 救急車のたらい回しも、医療費がかかり、厚労省に目の敵にされる急性期病床など、どこも進んでやりたくありません。今までの、普通の救急医療ですらこんな状況ですから、ましてコロナなど診られません。

 要するに、今回の新型コロナウイルスに対しては、最初から過去のシステムに頼るのは無理だったのです。今後はコロナのような、あるいはコロナ以上の新型感染症が出現するでしょう。その時に備えて、新しいシステムを準備しておくことが大変重要と考えます。もちろん、医療だけでなく、経済、国際関係、等々様々な分野の専門家を総動員して、緊急事態を乗り切れるようにしなくてはなりません。

 この新型コロナウイルス感染症は、貴重な経験だったし、是非、今後の参考にしなくてはならないと思っています。

 最後に一つ、オリンピックはやめにして、その資金でコロナのワクチン開発を進めるというのは如何でしょうか。

 それではまた。

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