スポーツと整形外科
皆さんこんにちは。副院長の福です。
新型コロナウイルスによる感染症の流行で、世の中は大混乱です。学校は臨時休校になるし、プロ野球、サッカーJ-リーグは開催延期を決めました。大相撲も無観客で行われています。
こんな中、高校野球、春の選抜大会の中止が発表されました。他の高校スポーツの大会はすべて中止と決まった中、最後に残った高野連の発表でした。遅きに失した感がありますが、妥当な決定だと思います。
今年の春の甲子園は、個人的には興味を持っていたのですが、ちょっと残念です。というのは、今大会から投手の投球数制限という新ルールが適応されることになっていたからです。1週間に500球という大変あまい基準ですが、始まりとしては良しとしなければいけないのかなと思っています。
そもそも投球制限がなぜ必要なのか、というと、投げすぎると選手の、特にまだ若くて骨や軟骨が未熟な選手の、肘を壊してしまうことが多いからです。野球には肘の障害のように、そのスポーツに特有の障害や外傷が見られます。スポーツ障害やスポーツ外傷を治療するのは整形外科の役割の一つです。
最近では、治療だけでなく、予防も整形外科の重要な役割となっています。ですから、高野連の今後の対応は、整形外科医として注目せざるを得ません。
歴史と伝統のある高校野球でも、このようにスポーツ障害に対する理解が得られるまでに、長い年月がかかってしまいました。これからは、高校野球で肘を痛めて野球をやめた、などという選手が出ないことを祈ります。
ほかのスポーツでも、そのスポーツ特有の障害が注意喚起されています。最近では、サッカーでのヘディングの練習を若い人にはやらせない方向で検討されています。サッカー選手の認知症にヘディングの影響が考えられているからです。ヘディングが脳に悪い影響を与えるというエビデンスがはっきり出てからのサッカー界の対応は素早いものでした。この点はほかのスポーツにも見習って欲しいものです。
サッカーや野球のように歴史と伝統があり、全国組織もしっかりしているスポーツでは、スポーツ障害や外傷に対する対応も取りやすいと思います。しかし、全国組織もない新興のスポーツでは、どのような障害が起こりやすいのか、どう対応したら良いのか、全く分からない状況だと思います。例えばチアリーディングです。チアリーディングは器械体操の要素だけでなく、人の体を踏み台にして塔を組んだりジャンプしたり、複数の人間で一人を投げ上げて複数の人間でキャッチするなど新しい運動要素が含まれています。どのような障害が起こるのか全く不明です。
また、最近の風潮として、スポーツの低年齢化があります。良い結果を出せるようにするためには、若い時から練習をすることが当たり前になっています。さらに、フィギュアスケートや器械体操では体格が小さい方が高難度の技を習得しやすいこともあり、低年齢化にさらに拍車が掛かっています。しかし、若年者では、骨や軟骨が弱く、スポーツ障害が起こりやすくなります。
このように様々なスポーツ界の変化に対応しつつ、スポーツ障害の治療や予防を的確に行っていくことが、整形外科に求められています。お子様にスポーツをさせている親御さんには、スポーツには障害が起こり得るということを理解したうえで、お子様の状態をよく見て、何か異常があれば、整形外科を受診して頂くようお願い致します。
それではまた。