院長渡辺邦夫ブログ

厚生労働省(厚労省)は保険診療と保険外診療の併用を原則禁止しており、もし同日に併用した場合これを混合診療とみなして患者さんはその費用の全額を支払う義務があるとしております。こんな中、昨年からインフルエンザの予防接種が問題になっています。厚労省の通達によると、予防接種は保険外診療です。保険診療日に接種すると混合診療に該当しますので別の日に、接種だけを目的として再度来院させて下さい、という内容でした。ただし新型コロナワクチン接種に関してはこの限りにあらず。更には、諸般の事情により別日の来院が困難な患者さんには接種してもよろしい。但し当日の保険診療行為に関しては基本診察料を患者さんに請求してはいけません、という通達でした。要するに政府は接種日、医療機関側に基本診察料はお支払いしません、「それでも良ければ予防接種、お好きにどうぞ!」ということです。患者さんファーストをモットーとする当院としては、家族のサポートもなく自力での来院が困難な患者さんに対して、別の日にもう一度予防接種だけの為に来て下さいと言えるはずもなく、今年からは診察料請求無しで保険診療来院時に接種可とすることを決定しました。厚労省の政策上の疑問点は混合診療以外にも多数ありますが、クスリの欠品問題も含め当院として今一番頭を悩ましているのは、医療非課税問題です。これは院内処方で頑張っている医療機関の経営を極度に圧迫しています。簡単に言うと100円のクスリを消費税込み110円で薬問屋から購入し、患者さんには100円でお渡ししなければならないという問題です。薬価差益も無くなり厳しい経営を迫られる中、当院ではこの件だけで年間3,000万円以上の減収となっています。一刻も早く正常な状態(薬購入時も100円)に改善してもらいたいものです。さて今年のインフルエンザ感染状況はCOVID-19の影響もあってかなり早い時期から深刻なものとなりつつあります。皆さん、今年は少し早めに接種することをお勧め致します。当院におけるインフルエンザ予防接種は予約無しで受けることが出来ます。ワクチンは接種後2週間で効き始め、その後5ヶ月間効果が持続します。厚労省も今年はインフルエンザワクチンの需要が高まることを予想し、過去5年で最大量(約6300万人分)のワクチン供給を予定していますが、2017年、2018年のような全国的なワクチン不足が生じる前に接種することを目指しましょう。 2023.10.10

人手不足が大きな話題になっている昨今、政府が進める「働き方改革」の影響もあって様々な職場が困った状況になっています。当院でもご多分に漏れず昨年位から就職を希望する若者が激減中です。今年こそはと気合を入れて、初任給を市内で一番になるように設定しましたが、反応はいまいちでした。そこで学校の進路指導の先生方に不人気の理由をお聞きすると、当院の診療体制にあるのではという可能性を告げられました。当院の診療体制は1989年の開業以来、幾多の変遷を経て現在の形に落ち着いていますが、確かに他の医療機関とは一線を画すものとなっています。何故この形に落ち着いたかというと、その一番の理由は「患者さんファースト」という当院の基本理念にあります。当院テーマソング4小節目で歌われる通り、主役は患者さんという考え方です。 受付時間は、夕方会社が終わってからも間に合うようにと、開業当初の6時から6時半に、土曜の午後しか来られないという方の為に、土曜日は午後6時まで(木曜日は午前のみ診療)となり、また祝祭日は午前中のみですが診療を行っています。これら一連の診療時間変更への反響は我々の想像をはるかに超える形で現われ、「おかげさまで」「ありがとうね」「助かります」等々、様々な感謝のお声を日々頂いております。しかしながら、これら一連の医療への取り組みは若者達からは不評のようです。給料は多少安くても早く帰宅出来る医療機関が若者から人気という話を聞き、妙に納得してしまいましたが、その一方で強い違和感も覚えました。そもそも医療機関で働きたいと考えた原点はどの辺にあるのか、初心に帰ってその頃の純粋な気持ちを思い出して欲しいと考えました。初代足利日赤院長小野康平先生に頂いた著書「医の奉仕」にある如く、医療機関で働く人間に求められるのは奉仕の精神だと思います。さまざまな症状を訴え来院される患者さんの助けになりたい、困っている人に寄り添って何かサポートしてあげたいという気持ちが高じて医療機関を就職先として選んだのではないでしょうか?私は開業以来掲げている「笑顔」「親切」「信頼」のモットーに共感し、患者さんとの感動の時間を共有したいと考える人達と共に仕事をしたいと考えています。さて当院では開業以来、少し多目にスタッフを採用してこれまでやって来ましたが、その理由は多目のスタッフで上手にシフトを組むことで早番・遅番・交代制などを活用し、より快適な勤務環境が実現出来ると考えるからです。こころざし高き若者よ、いざ集え わたなべ整形外科へ                                 2023.9.25

2023年05月08日

介護脱毛という考え方

 皆さん介護脱毛という言葉をご存知でしょうか?これは自分が介護される立場になった時に備えて行うデリケートゾーン(VIO)のムダ毛処理のことです。これまでVIO脱毛は20代を中心とした若年層に人気がありましたが、ここ数年都内では40~50代の、介護や老後を意識する世代に注目されるようになって来ました。年齢にこだわる理由は、脱毛で一般に使用されている医療用レーザーマシンがメラニンに反応するタイプの為、白髪になってからでは手遅れだからです。介護脱毛を考えている方は、アンダーヘアに白髪が混じる前に済ませることをおすすめします。

 さて欧米など海外では一般的なVIO脱毛ですが、これは単に美容目的だけではなく衛生面を考えて、エチケットとして行われていることが多いようです。VIOのムダ毛を減らすことにより、清潔で衛生的な環境を維持することができ、感染症のリスクを減らすことにも繋がります。また介護を必要とする方にとって、VIO脱毛は自己ケアの一環としても有効な施術です。介護に従事する方に対して清潔な環境を提供することで排泄の介助がしやすくなり、介護者の負担は大幅に軽減され介護の質を向上させることができます。この為、介護施設や病院など公共の場でも、安心して過ごせるようになります。

 ここでVIO脱毛について、少し現実的な話をしたいと思います。様々な施設で脱毛を受けるチャンスはありますが、やはり一番のおすすめは医療用レーザー装置を設置しているクリニックかと考えます。(当院二階、美容皮膚科ボヌールでもVIOを含む医療レーザー脱毛が受けられます。)エステサロンで使用されている光脱毛器に比べ、圧倒的に少ない施術回数で満足の行くレベルに到達することができます。 知っておくべき課題として、VIOは他の部位に比べてレーザー照射に伴う痛みが多少強いこと(但し回数を重ねるごとに痛みは軽減して来ます)。施行回数も、発毛密度や毛の太さ、皮膚の色素沈着の強さなどに左右されることが多く、他の部位より少し多くなること。脱毛が完了してしまうと毛を生やす毛根が破壊されている為、元の状態には戻せないなどがあります。こんな中、ハイジニーナと言ってVIOの毛をすべて脱毛してツルツルにすることを希望する方もいますが、温泉施設などで他人の目が気になるという方は、V(ビキニ)ラインの一部のみ自然な形で残すという選択肢もあります。                  2023.5.8 

    

2023年01月25日

クスリの欠品について

2年程前からクスリの欠品が目立つようになりました。この為我々は、診察あるいは会計の際、「処方薬が変更になりましたが効き目は一緒です。」という説明を毎日何回も何回もする羽目になっています。皆さんは何故こんなことになってしまったのかご存知ですか?このキッカケとなったのは福井県の小林化工(245人の健康被害を起こし2人が死亡)や富山県の日医工といった後発医薬品(ジェネリック)メーカーによる不祥事でした。この不祥事が明らかになったあと業界団体が呼びかけた自主点検の結果3000品目以上の医薬品に製造工程での問題が見つかり、クスリの供給停止や出荷調整が発生しました。つまり市場から大量のジェネリック医薬品が姿を消したという訳です。そのあおりを受け、良質のジェネリック医薬品、さらには先発医薬品にまで需給ひっ迫が連鎖し、問屋にクスリを注文してもいつ入荷するか分からないという状況になってしまっているという次第です。クスリが足りないのであれば各メーカーともこれをチャンスととらえ増産体制に入ればよい訳ですがその動きはまったく見られません。その理由は厚労省の薬事政策にあると考えられます。これまでは2年に一度薬価の見直し(薬価の引き下げ)が行われておりましたが2021年からはこれが毎年の見直しとなり、薬価が毎年下げられてしまう為、わざわざ設備投資して生産ラインを拡充してもわずかな利益しか期待出来ないし、クスリの種類によっては作れば作る程赤字が膨らむという構図になっております。この為、生産現場から撤退し廃業するジェネリックメーカーも出て来ているというのが厳しい現状です。

さて、これら一連の問題の根本的な原因は何かと考えると、厚労省が財務省からの医療費削減圧力に唯々諾々と従い国民の生命・健康を維持する為の支出を削り続けているという点であると私は考えます。常軌を逸した薬価引き下げの結果、メーカー側は少しでも利益を確保するため製造工程における品質管理をなおざりにしたのではという推測も成り立ちます。更に言わせてもらえば、採算割れするほど薬価を引き下げるのであれば、これと同時進行で、ジェネリックメーカーの製造工程で発生が想定される不祥事に対しての監視を強化し、厳しく指導すべきであったのにこれを怠たり2人の犠牲者を出した厚労省の罪は極めて大きいと考えます。

                              2023.1.25

2022年10月15日

政治家の世襲について

2022年10月4日、岸田首相の31歳の長男が政務担当の首相秘書官に抜擢されました。将来の世襲を見越した人事と見られますが、官邸側は「適材適所で総合的に判断した」と、木で鼻をくくったような答弁を繰り返しています。選挙で選ばれたわけでもなく、難関な試験に合格したわけでもない若者が、ただ総理の息子というだけで選ばれるのは、正に官邸を私物化するようなものであると私は考えます。

そもそも日本では国会議員全体の3割が世襲、自民党に限れば4割が世襲です。これに対して世界の先進国を見ると世襲議員の割合は1割以下と言われており、日本は世界でも稀にみる世襲議員の多い国と言えます。平成元年(1989年)~令和4(2022年)の33年間を振り返ると実に20人の首相が誕生しましたが世襲でない首相はたったの6人でした(宇野宗祐、海部俊樹、村山富市、菅直人、野田佳彦、菅義偉)。つまり総理大臣の世襲率70%という異常さです。この背景にあるのは先進国に比べて選挙の投票率がとても低いことかと思います。投票率が低ければ低いほど既得権益を握った人達に推された候補者が当選しやすくなり、既得権は温存されます。

 また政治を家業と考える政治家たちは、何としてでもこの美味しい家業を子孫に残したいとの一念で動き、後援会組織と一丸となって世襲議員の誕生に奔走します。この結果、前途有為の新人候補は当選しにくくなり、国会は老獪な利権政治家の巣窟と化し国家運営は行き詰まり、現在まで30年間続く国家の危機的な状況を生み出していると考えます。さて国家、国民の為に奉仕するという強い意志を持ち、私利私欲に走らず、誠実で高潔、そして強い正義感を持った政治家が選ばれる為には、先ず選挙の投票率を欧米先進国並みにアップすることが喫緊の課題と考えます。政権与党にとって一番都合がいいのは、選挙なんか行っても世の中何も変わらないさ、まともな候補者が見当たらないなどと、政治に対する興味を失わせ、国民が投票に行かないという行動を取ってくれることです。シンガポール、オーストラリア等々厳格な罰則を設けて義務投票制を採用している国もありますが、我々国民は無能な政治家に国のかじ取りを委ねることで起こる現代日本の悲劇的な状況を厳しく正視し、もっと積極的に政治と向き合い、自主的な投票率アップに取り組みたいものです。  

最後に一言「子孫に美田を残さず」老子                    

 政治の世界では特に傾聴に値する言葉かと思います。   2022.10.14         

① 誠実で高潔、正義感が強く、決して嘘をつかないこと

② 常に謙虚で高い知性を持っていること

③ 誰に対しても親切で平等であること(人種、性別、年齢、宗教)

④ 視野が広く常に高所から物事を見ることが出来ること

⑤ 常に国民目線であること(上から目線、下から目線はあり得ない)

⑥ 初心を忘れず考えがぶれないこと

⑦ ユーモアのセンスがあること

⑧ 英語が普通に話せて、基本的に外人コンプレックスが無いこと

⑨ 人間的に魅力があり、年齢、性別、国籍を問わず愛されキャラであること

⑩ 論理的思考と説得力のある簡潔なスピーチが出来ること

⑪ 議論に強く、常にスマートで上品な言葉でのディベートが出来ること

⑫ 既成概念に囚われず常に柔軟な発想で物事を処理出来ること

⑬ いつも変わらぬ、包み込むような包容力があること

⑭ バランス感覚に優れていること

⑮ 博学であること(特に歴史に造詣が深い)

⑯ 既得権益にしがみつき努力しない人が大嫌いなこと

⑰ 時代を読む先見性に優れていること

⑱ 知識人でなく教養人を目指していること

⑲ アイディアが豊富でそれを形にすることが得意であること

⑳ 常に上機嫌で笑顔を絶やさず、聞き上手であること

㉑ 日本の国を愛し、日本人であることに誇りを持っていること

㉒ 様々なジャンルの専門家と交流があり、リスペクトし合いそのサポート体制が構築されている

㉓ emergencyに対する対応能力が優れていること

㉔ 肩書きや名誉を求めずそれらに無頓着であること

㉕ 精神的にも肉体的にも極めてタフであること

㉖ 狡い人、卑怯な人が極度に嫌いであること

㉗ 自分より凄い人、尊敬できる人を知っていて常にその人に近づこうと努力していること

㉘ 情報収集のアンテナが高く、常にupdate で正確な情報をバランスよく入手していること

㉙ スポーツを愛し定期的にゴルフ以外のエクササイズをしていること

㉚ 高齢者を敬い、心からのサポートを惜しまないこと

㉛ 官僚の作文を棒読みせず、自分の頭で考え、自分の言葉で話すことが出来ること 

2022.7.7

2022年06月12日

お薬手帳のこと 

 お薬手帳の制度は1993年、ソリブジン薬害事件をきっかけとして導入されました。内閣府が行った調査によると、2020年10月の段階でお薬手帳を所持していると答えた人は71.1%でした。しかしながら当院外来に初診で来院される患者さんのほぼ9割以上の方はお薬手帳を持参されていないというのが現実です。これではお薬手帳を持つメリットをまったく活用出来ないことになります。そもそもこの制度が導入された目的は、現在通院されている他の医療機関からの投薬内容、投薬日などを確認し、これまでの薬歴も含めて情報収集することで、薬の重複投与を回避し、薬の飲み合わせの確認も行い、患者さんに対して最適な処方が為されることを目指すものでした。また外出の際、交通事故その他の不慮の事故に見舞われ救急搬送された時など、病院で対応した医師はお薬手帳をチェックするだけでその患者さんが現在罹患されている疾患に関する情報収集を瞬時に完結出来るというメリットもあります。但しこれはあくまでも、医師や薬剤師達がお薬手帳の利用価値を正しく理解し、積極的に記載内容のアップデートに日々努めるということが大前提です。そして出来ればお薬手帳を一冊にまとめ、異なった医療機関を受診しても必ず同じお薬手帳を提示して、各医療機関の処方内容をその一冊に集約してもらうことがおすすめです。さらにその先目指すべきは大前研一氏の提唱する国民データベースの導入であると考えます。この導入にあたっては、生体認証によるログインでセキュリティーを強化し、すべての個人情報が安全に一元管理され、国民から信頼されることが最重要であります。また高齢者でも簡単に使いこなせるスマホベースのシステムとすることで、今後お薬手帳はもちろん運転免許証、健康保険証その他個人認証に必要なカード類はすべて不要となります。我が国は先進国の中で最もデジタル化が遅れていることで有名ですが、2016年1月莫大な税金を投入して鳴り物入りで導入されたマイナンバーカードは住基ネットの古いシステムに接ぎ木したに過ぎない代物で極めて使い勝手が悪く、また2021年9月に設置されたデジタル庁もお粗末極まりない組織のようです。ここは世界で最も先進的なデジタル社会を実現したエストニアやデンマークなどのデジタル先進国に学び、世界的視野で有能なITエンジニアを招聘し、ゼロベースでシステムの再構築を依頼することが今後の税金の無駄遣いを防ぐことにも繋がるベストプランであると考えます。
現在の日本の状況は、先進諸国と比較して恥ずかしいレベルのデジタル後進国であります。そこに住む国民のせめてもの生活の知恵として、取り敢えず皆さんにお願いしたいのは、
「病院に行く時以外でも、外出する時はお薬手帳を忘れずに。」という事です。決してかさ張るものではありません。自分を守る大切な必須アイテムとしてカバンの中に忍ばせておいて欲しいと思います。                         2022.6.12  

最近ジェネリック医薬品が次々に姿を消し、外来が混乱しています。先日も当院の主力処方薬である筋弛緩剤(肩こり、腰痛などに処方)が入手困難となり処方が一時ストップし、患者さんには多大なご迷惑をおかけしてしまいました。

その原因はその生産に携わるメーカーが生産現場から撤退している為です。現状は生産中止の知らせが入るたびに事務長が薬問屋さんと相談して新たなメーカーを探している状況です。

これと関連する話として1997年8月、田辺製薬がラボナール(チオペンタール)の生産中止を発表した当時のことが鮮明に思い出されます。この薬剤はとても使い易く効果も確実で価格も安いということで日本中のほとんどの病院が日常的に全身麻酔の導入剤として使用していましたが、突然の生産中止の発表に麻酔科医達は一時大混乱に陥りました。生産中止の理由は極めて明快であり、厚労省の指示で薬剤価格が不当に安くされた為、生産すればする程赤字になるからということでした。

これ以外に代替可能な薬剤が無かったこともあり、全身麻酔を伴う手術が出来なくなって一時社会問題にまで発展しました。この時は日本麻酔科学会が中心となり厚労省に強く抗議して薬価を上げさせ、田辺製薬側も納得して生産が再開されました。さて厚労省は医療費削減を至上命題に掲げ、値段の安いジェネリック医薬品を処方するようにと、さまざまな方法を用いて半ば強引に誘導しています。

2年毎に薬価改定と称して5%~10%程度クスリの値段を下げ続けていますが、新薬の価格が異常に高い反面ジェネリック医薬品の価格はかなり安く抑え込んでいます。患者さんからすればクスリの値段は安ければ安い程ありがたいという事になるのでしょうが、その結果採算割れするという理由でメーカーが生産現場から撤退してしまい、外来で治療上必要なクスリの入手が困難になるという事態が起こっているという事は是非皆さんに知って欲しいと思います。こんな中、先日もジェネリック医薬品メーカー2社の不祥事が発生しましたが、薬価を低く抑え込まれた中、何とかして利益を確保しようとして起こるべくして起こった事件として私は認識しています。

勉強不足のマスコミは日本の医療費が高いなどとトンチンカンなことばかり言っていますが、日本の医療費はアメリカと比較して異常に低く抑え込まれおり、 医師の診察その他の技術料はアメリカの2割程度です。さらに言うならニューヨークで盲腸の手術を受けると一泊の入院で約250万円、これに対して日本では1週間入院出来て約40万円です。このように海外に比べて格段に安い医療費で運営されている日本の医療を支えているのは自己犠牲と奉仕の精神を叩き込まれた医療従事者達であるということも時々思い出して欲しいと思います。

そして会計検査院の機能をもっと強化し、税金の無駄遣いを止めさせ、社会保障への予算配分が適切に成されることを切望します。 2021.8.19

様々な誤解があるようですので、当院の無料送迎バス導入に関する事実関係を記載したいと思います。そもそも来院患者さんの為に、無料の送迎バスを運行しようと発案したのは、平成元年10 月の、当院開業の 1 年位前だったと記憶しています。当時の私は新規開業に向け、期待と不安の入り混じる中、これまでの勤務医時代に蓄えた様々な知識や経験の整理、そして勤務医時代には成し得なかった新システムの導入に向けて、希望に燃える日々を送っていました。常に患者さんの視点から発想し、「こんな病院あったらいいな」をテーマとして掲げ、志を同じくする仲間達と定期的に会合を重ね、熱き思いをぶつけ合う中で、無料送迎バスの提案もありました。自分で通院する手段を持たず、家族のサポートもまま成らぬお年寄りに対し、救いの手を差し伸べるという発想はとても自然であり、困っている人を助けるという、医療の原点に立ち帰るものと感じました。また整形外科診療の特殊性を考えると、リハビリ治療も含め、最低でも週に 2 回程度の通院を要する事や、膝や腰その他、身体各部に疼痛を抱える患者さんに対して、無料の送迎バスを利用していただくという発想は、とても自然な流れの中から生れて来たものでした。 この一連の経過の中で、足利市医師会への入会申請の際、バスによる送迎サービスのプランをお伝えした所、それは他の会員の迷惑になるので、医師会として認めるわけにはいかないという見解をいただきました。まったくの新規開業であり、相談する相手が誰もいない孤立無援の身としては、不本意ながらこの指示に従い、送迎バスのプランは諦めて開業することにしました。しかしそれから数年後、島田町で新規開業された「みくりや整形外科」さんでは、なんと開業と同時に送迎バスサービスを始めたのです。これには私も釈然としないものを感じましたが、当院外来への影響も無い事から、とりあえず静観を決め込む事に致しました。ところがまもなく、当院通院中の患者さんから、送迎バスの話題が、診察の際に持ち出されるようになって来ました。最初は医師会の意向に背いてまで行動するのは如何なものかと、適当に言い訳をしてごまかしていたのですが、毎日毎日10数人規模で訴えられ、その後、送迎バスサービスを始めて欲しいとのラブコールにまで発展し、とても自分1人では抑えきれない状況となって来ました。そこで思い余って知り合いの医師会理事に電話をし、理事会で送迎バスの問題を議題として提出し、これに関する足利市医師会の公式見解を出してくれるようにお願いしました。もし OK なのであれば、当院としては直ちにその導入に向けて動き出すし、NO と言う事であれば、医師会として何らかのアクションを起こして欲しいとの旨お伝えしたわけです。その後の詳しい経緯は分りませんが、いずれにせよそれからまもなくして、足利市医師会長の名前で、市内のすべての医師会員に宛てた文書が配布されました。その内容は、「足利市内の生活路線バスが廃止され、通院に不便を感じていらっしゃる患者さんの為、無料の送迎バスを運行する事は悪い事ではない。但し競合する医療機関の前で、患者さんを乗降させることは慎むべきである。」といったようなものだったと記憶しています。文書入手後、医師会事務局に電話で問い合わせた所、やはり書面の通りであり、バスによる送迎は問題ないと言われました。これを受けて当院では直ちにプロジェクトチームを立ち上げ、平成 9 年 11 月の 1ヶ月間をかけ、来院しているすべての患者さんを対象に、アンケート調査を行いました。そして両毛タクシーさんの協力も得て、送迎を希望するすべての患者さんを網羅する形でバスの走行路線図を作成し、停車する場所、時間など何回も試験走行を繰り返しながら徐々に詰めて行きました。また地区別に、バスによる送迎を希望する患者さんの名簿を作成し、バスの送迎時刻に変更が生じた場合は、送迎の前日ないし早朝に、職員が一軒一軒電話連絡をするなど、極めて根気の要る作業の連続でした。このような状況の中、平成10年1月4日に何とかスタートを切った送迎サービスですが、やはり予想通り、外来の来院患者総数は送迎スタート前と殆んど変わらないというものでした。これまでタクシーや家族に頼っていた方が、送迎バスを利用して、お金の心配をする事も、家族に気兼ねする事もなく来院できるようになったものと解釈しています。現在当院 1 日外来総数の 5%前後の方が送迎バスを利用し来院されていますが、経営的には全くの不採算部門です。「これ以上儲けてどうする?」「こんなことやるから益々外来が混んで、私達の待ち時間が増えるから止めて欲しい」など様々なご意見がありますが、このサービスを続けている理由は唯一つ、患者さんから寄せられる、心のこもった数多くの感謝の言葉があるからです。以前、足利日赤前院長の小野康平先生から「医の奉仕」という著書をいただきましたが、社会的弱者の立場にある方に、多少でもご奉仕出来るのであれば医師としてこの上ない幸せと考えています。こんな中、平成 16 年 8 月の足医月報、第491 号において、「送迎バスサービスは患者集めを目的とした行為でもあり、不当な競争が惹起される恐れや医療コストを押し上げることとなり、法的に問題無いとはいえ控えるべきとの意見が多かった。」という理事会報告の記載がありました。私は送迎バスサービスを中止する事は、それが足利市医師会の強い要望ということであれば従うつもりでいます。しかし問題があります。それは、こういう類のサービスは、始めるのは簡単ですが、中止するのがとても難しく、送迎バスを当てにされている患者さんの理解が、はたして得られるかという事です。恐らくパニックに近い大混乱が生じ、最悪の場合、足利市議会やメディアで大きな社会問題として取り上げられる可能性があります。現在私が考えているソフトランディングの方法としては、足利市に依頼し輸送手段として、「メディカル・シャトルバス・サービス」のようなものを立ち上げてもらい、医師会としてもこの事業に多少のサポートを行い、またこのサービスを利用する医療機関は、その利用頻度に応じて相応の負担をするといった内容です。様々な議論のある所かと思いますが、当院としては医師会の意向を無視して勝手な行動をしているという認識は全くありません。むしろ朝令暮改の如き印象を受けかねない、今回のような問題提起に当惑しているというのが率直な印象です

           初回投稿日  2011.4.7  改訂版投稿日 2021.5.21

 COVID-19との戦いが始まって一年以上経過しましたが、我が国においては一向に感染収束の気配が感じられない状況にあります。世界に目を転じるとコロナ対策において各国がその英知を結集して取り組んでいる姿が見えて来ます。国によって、その対策に成功し市民生活がコロナ前の状況に戻りつつある国もあれば、依然として感染拡大が続く国もあります。

 こんな中、コロナ封じ込めに成功している国に共通するのは、トップに立つ人間の確固たるリーダーシップであり、国民との信頼関係の構築です。台湾の蔡英文総統、ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーダーン首相、シンガポールのリー・シェンロン首相など、TVカメラの前で官僚の用意した原稿をたどたどしく棒読みするのではなく、自分の言葉で情熱的に訴える姿には胸を打たれるものがあります。専門家と政治家がタッグを組み、リーダーはエビデンスと信念を持って最善の政策を国民に提示し、説得力のあるメッセージを伝える。有能なスタッフをコネではなく実力本位で採用し強い権限を与え、何のしがらみもなく存分に活躍できる場を提供するリーダー達の器の大きさに、ただ感服させられます。それにつけても我が国の政治家たちの悲惨ともいえるレベルの低さ、integrity(誠実、真摯、高潔)の欠如、そしてそれを支えるべき官僚たちの誇りを失った忖度行動、さらにはジャーナリスト達の、権力に媚び真実を伝えぬ報道姿勢を見るにつけ国家全体としての「知の欠如」を思い知らされ日本国存亡の危機であると日々感じております。


 批判ばかりしていても問題解決には至りません、COVID-19対策を自分なりに考えてみることにしました。
先ず我が国が抱える最大の問題点は、COVID-19対策を統括する絶対的な権限を与えられたリーダーが不在であるということです。誰も責任を取らない体制で動いている為コロナ発生から一年以上、現在に至るまで無為無策が続いています。

 WHO が推奨するコロナ対策は検査・追跡・隔離(Test Trace Isolate)「略してTTI」でありますが、コロナ対策として真っ先に進めるべき感染状況の把握が厚労省医務技監によって制限され遅々として進んでおりません。検査をすると大量のPCR陽性患者が病院に押し寄せ、医療崩壊に陥るなどという妄言に惑わされず、ここはもっと民間の力を活用し、PCR検査や迅速抗原検査など、エリアを設定した上もっと大々的に無料で実施し検査体制の大幅な拡充を図ること。そうして得られた情報はすべて公開し、これを戦略的に活用すること。また台湾のように強い権限を持って各省庁を指揮監督できる「中央感染症指揮センター」のような組織を新設し、指揮命令系統の強化と横の連携・協力を促進する体制を構築すること。

 こんな中、台湾で私が特に印象深いと感じた人物は日本の厚労大臣に当たる「陳時中」さんです。彼は2020年2月から連日午後2時から時間無制限で、すべての質問がなくなるまで記者会見を開き続けていた「鉄人大臣」という敬称のある方です。日本の政治家たちが開催する、時間が驚異的に短く、しかも質問にまともに答えようとしない不誠実な会見とは大違いです。台湾ではこうした会見を通じて国民と政府との間に強い信頼関係が構築され、国が発令するコロナ対策もスムーズに進んだのではないかと感じました。 


 さて検査陽性者に対しては、これを無症状、軽症、中等症、重症に分類し自宅待機で済む無症状者からエクモの使用が必要な重症者まで、その搬送先を適切に行えば現状の医療資源の最大活用で乗り切れるし、医療崩壊も防げると考えます。

 具体的には無症状や軽症の方はその程度に応じ、自宅待機か中国の如くプレハブ式の簡易病床を設営し収容する。中等症~重症の方はコロナに特化した新設の専門病院や既存の高度医療機関で分担して受け入れるなど。

 こんな中、都立広尾病院等の高度医療を展開する総合病院をコロナ専用病院にするというプランは医療資源(高度な設備とマンパワー)が無駄になるという意味で中止すべきです。また感染経路の徹底した追跡を通じてクラスターを潰し、飲食に限定せず感染機会の多い施設の営業停止とそれに伴う十分な補償をセットで行うこと。さらにコロナ治療薬やワクチンの日本国内での開発・製造については国家戦略上の最重要課題として捉え、国として製薬メーカーに対し十分な支援を行うこと。そしてこれまで「アベノマスク」の118億円超の無駄遣いに始まり持続化給付金に関わるペーパーカンパニーによる中抜き20億円等々、COVID-19に関連した夥しい税金の無駄使いを改めて徹底的に検証・総括し、決してうやむやにせず、その責任者を厳罰に処することで再発予防に努めること。

 こうした地道な作業を検察が政治家に忖度せず断固として実行することで国民の政府への信頼も幾らか回復するのではないか、また新型コロナ感染症というこれまで経験したことのない国家の一大事ではありますが、これをある意味我が国の抱える様々な問題点をあぶりだし改革する絶好の機会であると捉え、心ある政治家達は超党派で結束し直ちに行動を起こすべき時が来たと考えます。